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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 小説【もくじ・関連記事】 >  戦場の魔法使い [続]  

戦場の魔法使い [1]:命の距離 ・プロローグ【MGS小説】

 



ナイフは使わないと決めていた。
必要に駆られない限りは。


刃物の戦闘は独特だ。
殺した時の手応えがありすぎて、それに引きずられそうになる。
敵の命が消える瞬間、それを奪ったのだという確証。あらゆるものをはっきりと感じた。この手から。
銃でも仕留めたかどうかは分かったが、それとは全く違った生々しい感触だった。

ナイフを使う特殊任務は、大抵が暗殺、サイレントキリングだ。
存在を気取られないよう忍び寄り、気付かれた時には命を奪っていなければならない。
標的に背後から近付いていく束の間、自分の五感が研ぎ澄まされるのを強く感じる。
目はよく見え、耳は敏感になり、殺す相手の鼓動や息遣いまでもが、手に取るように分かるようになった。
敵を身近に感じれば感じるほど、相手と一体化するほど、自分の存在が消えたような感覚に陥る。
俺は奴だ、と。

命を奪う瞬間、そこに存在するのは、言わば生存証明だった。
相手と己の生命活動を、最も強く感じることのできるその一瞬。
五感に感じる何もかもが、生きている証だった。拘束した相手の体温、突き立てたナイフから感じる肉の手応え、温かな脈、その全てが。
全身に、心臓の鼓動を大きく感じる。脈拍数は上がり、体温も、息も上がる。そして実感した。
生きている。今を。


暗殺は一瞬の勝負だ。
回を重ねるごとに手際は良くなり、反り血も浴びなくなっていったが、未だに初めての時の感覚は忘れられない。
実戦の経験は既にあったが、そんなものは全く当てにならなかった。
無我夢中だった。今思えば、下手な殺しだ。

切り口は乱雑で、反り血を大量に浴びた。温かだった。濃い血液の甘い匂い。硝煙に混じっていない純粋な、生々しい殺しの匂いだった。
浴びた血はすぐに冷たく固くなり、殺した相手は腕の中で脱力していた。
ああ、こいつは死んだと分かった。死体だ。もう、肉の塊だ。
それを見て初めて、現実を認識した。

瞬きをした。忘れていた。
息を吐いた。止めていた。

汗が吹き出た。息は荒く、全身が緊張していたと改めて気がついた。やっとの思いで一仕事を終えた、そんな疲労感がある。
そして気持ちが高ぶった。
もう取り返しのつかないことをしたという瞬間、人間はまるで焦れるような感覚を感じるのだと、そう知った。
無性に女が欲しくなった。

銃で殺した時の手応えなど、これに比べたら霧の中にいるような曖昧さだ。

その場にいる自分が、そして横たわった相手が、お互い獣にでもなったように感じ、これは自然の摂理なんだと理解できた。
事実にどうなのかは関係なかった、そう感じたのだ。
生き残った歓喜が沸き上がる。尊い何かを手に入れたような満足感。
この世の誰にも、自分の存在を脅かす事はできない。解き放たれた気分だった。

そう、勝ち残ったのだ、俺が。
目の前に倒れたこいつではなく、俺が!




戦場から戻ると、それはやってきた。

まとわりつくように、俺の中に居座るそれ。何だかよく分からないものだ。
ただ重苦しい、陰鬱な何かだった。
時にそいつは、殺した相手になったりもした。首を斬られ、各所の頸動脈を斬られ、赤い血と肉を見せて横たわっている。
忘れない、奴の顔。死んだ顔。
その死んだ顔のまま、どろりと白濁した目を開き、じっと黙って俺を見つめている。

見ないでほしかった。

殺人の後遺症には色々ある。
知識くらいはあった。苦しむかもしれないと思ってはいた。
しかし銃の時にはそんなものは感じず、気にする必要がなかった。それで自分は、平気なんだと思っていた。殺しなど、取るに足らない事だと。
後遺症は、戦場に出た兵士には必ずと言っていいくらいに出るものだ、弱い奴ほど苦しむ。
だからもしやと思っても、無視しようとした。
自分を弱いとは認めたくなかった。決して。
その強がりだけが、俺にとっての支えだった。拠り所の全てだ。虚勢を張りながら、心の底では随分と頼りない気がしていた。

殺すことなんか、たいした事じゃない。朝食でパンにバターでも塗るようなものだ。
毎回自分にそう言い聞かせ、殺した。銃でもナイフでも、関係なかった。
もしかしたら、また勝ち残った高揚感で、この重苦しい何かを払拭できるのではないか、そうも考えていた。
しかし初めてのあの瞬間ほどの喜びが、二度と訪れることはなかった。
俺の中に居座る、その何かのせいだ。

それでも殺した。殺すしかない。他に道はない、なぜかそう信じていた。
自分の人生には、兵士として生きるしか道がないのだと。
強烈な強迫観念だ。刷り込みと言ってもいい。
任務だけが、自分を生かしている、そう疑いもせず、ひたすら殺した。

するとやがてその何かは、違ったものになりだした。
奇妙に聞こえるかもしれないが、俺の嫌っていたそいつが、そのわだかまりのようなものが、いつの間にか、俺のなりたかったものに姿を変えていたのだ。
殺す事は自然なことだと、俺に訴えるようになっていた。

喜べと、やつは語りかけてくる。殺せることを純粋に楽しみ、生き残ったことを誇れと。
不思議なもので、そうなるとむしろ以前のままの自分でいたくなった。
あんなに切望した獣の姿に、もうなりたいと思わない。本能だけで殺すような怪物には、なりたくなくなっていた。人間のままでいたかった。
だがそいつは、日に日に体内で膨れ上がる。
俺を獣にしようとするもの、俺を俺でなくするもの。俺を、侵食するもの。

殺すことで、生き延びることで、高まり、生きていると感じる。
それは紛れもなく、初めて人を斬り殺した時の俺だった。

笑える話だ。
俺はずっと俺自身に怯え、俺自身に責められ、やがて俺自身に駆り立てられるようになっていた。
今まで胸に重く響いていた声は全て、己のものだった。奴は俺だ。
声は常に訴えていた。
そんなになりたいのなら、なりたいものになればいい。
殺しを歓び、命を奪い合うことに、生き残ることに、生きている実感を得ればいい。
充足を、感じればいい。
俺にはそれしかないのだから。

そう、確かに奴は正しい。
否定しようもなく、俺にはそれしかなかった。




逃れられないなら、道は一つだ。順応するしかない。

悪あがきとは分かっていたが、俺はナイフを使うのをやめた。とどのつまり、俺には刃物は向いていなかった。
感覚が鋭敏になりすぎて、知りたくない、分かりたくないものまで、感じ取ってしまう気がするからだ。相手の恐怖や、死の瞬間に感じる想いまでも。
それは訳の分からないものも含んでいた。混乱や恐怖はまだいい。自分にもある。死にたくないという思いも。
しかしその先にある、もっと複雑な切実な想いのようなものが、理解できぬまま腹に溜まって、嫌な感覚を生んだ。
相手との一体感が鮮明になりすぎて、果ては自分を殺すような錯覚を覚えるようなこともあった。

だから俺は、ナイフを捨てた。
腕を惜しまれたが、関係なかった。


刃物を使わなければ、残された武器は銃だった。
銃は、俺には丁度いい武器だ。相性は抜群にいい。

相手を好きにできる距離はよく分かっていたし、空間的な隔たりがある分、死ぬ瞬間を直に感じなくて済む。訳の分からない感覚に、煩わされることもない。
気配や勘のようなもので、伝わってくる手応えだけで十分だった。
ナイフを愛する輩には、銃は臆病者の武器だと言われるが、臆病者で結構だ。
殺す相手への流儀がないと言う奴もいる。確かにそうかもしれない。命をいただく重みが、刃物にはある。
あの一体感を愛せるのなら、それもいいだろう。
俺はごめんだった。

小さな弾丸が、俺の刃の変わりだ。
銃口を向ければ、相手の存在を身近に感じられる。射程内なら気配は十分に伝わってきたし、距離は感覚に対して、いい緩和材になった。
弾の道筋が見える訳ではなかったが、どう撃てばどこに命中するかも大体把握できいた。
不自由は何一つない。一度構えてしまえば、やることは決まっていた。敵よりも早く正確に引き金を引けばそれだけで、あとはどうするか、思いのままだ。

ナイフを使わなくて済むからというのもあっただろう、俺は銃を特別愛した。
どんな距離からも銃を使い、あらゆる銃器に対応できるよう、己を鍛えた。造りを把握し、取り扱いを体に叩き込み、常にその重みを体に感じるように心掛けた。
撃てば大体癖も掴めるくらいには、その特性を掴んでいると自負できる。相当親密な付き合いになったと言えるだろう。

こうなればもう安心だった。何にも煩わされることはない。やっと楽になった気がしていた。
殺す相手に敬意を払い、引き金を引けば、それでいい。
相手を殺し、俺は生き延びる。シンプルな世界だ。
いざ戦闘になれば、暗殺だろうが混戦だろうが、どう敵を無力化していくかだけに頭を使った。後は体が勝手に処理する。
慣れたものだ。もう戦場が、俺の庭だった。

恐れもなく、喜びもない。
平坦な任務の日々がやってきた。だが苦しんでいるよりは、断然この方がいい。
泣いても笑っても、自分には殺すしか能力がないのだ。
戦うこと、それしか。
他の道を知らず、他の生き方をする術も知らない。

望むと望まなかろうと、戦場が俺の生きる場所だ。
だから順応した。生きていくためだった。


いつしか、あれだけ自分を苦しめた、俺の中にいる俺も、姿を見せなくなっていた。










つづく



 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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