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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  キッチン  

キッチン (前編):MGS短編。ご家族の、お台所にまつわるちょっとした話。

 



雲の下は生憎の雨でも、上空を飛んでいる大型輸送機には関係がない。窓の外には明るい日差しが溢れ、大きく拡げられた両翼に降り注いでいる。
しかしノーマッドの居住空間に窓は少なく、ほとんどの場合、外の美しい景色も住人には伝わってこない。

そんな、いつもの晴れた午後。


「スネーク、キッチンタイマー知らないかい?」
「…俺が知るか」

機内の階段を下りながら、オタコンが声をかけると、階下から面倒そうな返事が返ってくる。
声の主は簡易ソファーに壁を向いて寝そべり、寝煙草を吹かしていた。

「君が使ってたやつだよ?ガーコの。あれ今じゃ貴重なんだから」
「俺が知るか」

近くに寄って、極力明るく話しかけてみても、相手はどうでもよさそうな声を出すのをやめない。
それでつい、触れずにおこうと思った件が口をついた。

「煙草、サニーが怒るよ」

ノーマッドでの生活で、サニーが散々喫煙について反対するので、オタコン自身はその件について、強く意見するのをやめていた。
彼女はこの百害あって一理なし、と言われる嗜好品について、どうにも理解しがたいものを感じているらしい。
時には誰の為にもならない事もしてしまう人間の性分について、彼女はまだまだ年相応に、色々と経験不足のようだ。
しかし多数決にしろ、相手がかつての伝説の男にしろ、どのみち小さな女の子の方に部があるのは明らかだった。

「……、俺が知るか」

ほんの一瞬、何か考えてもらえたらしい沈黙があったものの、返ってきたのは先程と変わらない、投げやりな言葉と態度で、残念な気持ちになる。
自然と溜め息が漏れた。

「君ね、そういう受け答えは、僕も怒るよ?」
「………」
「あーはいはい、知らないのはわかったから。もういいよ。じゃあね」

また同じ台詞を聞きそうになって、オタコンは肩をすくめて退散した。
以前だったなら、自分が注意を促せば、スネークもそれ以上何かに意地を張るような事はしなかった。そう思う。
今はまるで、嫌われたいのかと思うような言動がたまにあった。

それを見るたび、年寄り特有の意固地な態度なのか、それとも別に理由があるのかと、日に日に歳を取っていくような白髪の相棒のことを、案じない訳にいかない。
年端もいかないオルガの娘を預かってからというもの、彼は自分が、孫ほどの見た目の少女に悪影響を及ぼすのではないかと、そんな風に考えている節がある。
もちろん、どう接していいのか分からないでいるのも確かなようで、それで距離を縮めないように、嫌われるような事をするのかもしれなかった。

階段を上ると、サニーは階上にしゃがみ込んで、こっそりとやり取りを覗いている。
オタコンは何だか釈然としない気持ちの腹いせに、背後で寝ている老人にも聞こえる声で、彼女に話しかけた。

「残念、スネークも知らないって。もう一回探してみようか」
「…使っ…てた?」

対してサニーは、内緒話の延長のような小さな声で尋ねてくる。
キッチンタイマーをスネークが使っていたというのが気になるようだ。

「え?ああ、そうだよ。スネークは料理なんかしないけど、時間を計るのに使ってたんだ」
「……」
「うちにあったのは事実なんだから、ちゃんと探せば出てくるさ。ね、ほら探そう」
「…うん」

納得のいかない様子ではあったものの、彼女は大人しく頷くと、回れ右をして立ち上がり、先に立って歩き出した。
階段を上り際、オタコンは視線を下ろし、横になった相棒を窺ったが、その背中は相変わらずこちらを拒絶したまま、煙をくゆらせていた。

料理はしない。それはスネークにとってみたら、ほぼ嫌味としか取れない台詞のはずだ。
彼は食事を作る際にも、それを料理と呼ぶ事は滅多になかったし、むしろその事実を否定していたくらいだった。
サニーが来てから、ノーマッドでは一度も腕を振るった事がない。
丁度キッチンスペースがサニーの部屋として使われているのも、原因の一つかもしれない。そんな風に考えたこともある。
しかし煙草は換気扇の前で吸っているのを考えると、それが理由なのかどうか、判断は付きかねた。
オタコンにとってみても、サニー同様、喫煙者の隔離空間での苦しみなどは、遥か理解の範疇外だ。



意地悪なスネークの事はもう放っておいて、二人して二階部分の奥にある小さな収納庫から、生活スペースにダンボールを運び出してくる。
あれこれ荷物を漁っていると、サニーが何度か躊躇ったあとに、おずおずと先ほどの話題を口にした。

「…ハル兄さんは、食べたこと、ある…の?」

少し驚いてそちらを見ると、相手は俯いたまま一瞬だけ目を合わせ、しかしすぐに視線を手元に落としてしまう。
彼女の言動は、オタコンの知っている同年代の少女のものとは、まるで違っていた。
彼の妹、エマは当時もっと快活で、小さな女の子らしく背伸びして振る舞い、ちょっとした生意気を言って可愛らしかった。
サニーだってもちろん手放しに可愛らしいけれど、彼女にもそんな、伸び伸びとしたところがあればいいのにと、つい思ってしまうのだ。
そしてそんな環境を作れない自分自身に、不甲斐なさを覚えた。

「食べたって、何をだい?」
「ス、スネークの、…料理」

覗き込むようにして聞くと、サニーは申し訳なさそうに益々俯いてしまう。
どうやらタイマーの件の誤魔化しは、彼女には通用しなかったらしい。
きっと聞かない方がいいと思ってやめようとしたんだろうに、それでも気になって仕方なかったのだろう。
そう思うといじらしさを感じて、小さな銀髪の頭にそっと触れた。柔らかい髪の感触と、温かな体温。

「…サニー、あのね」

そのまま頭を撫でると、彼女は耐えるようにじっとして、息をひそめている。
不快な思いをさせているんじゃなければいい、そう願った。いつもそうだ。

「スネークは確かに、以前は食事の用意をしてた事もあった。彼は何でもできたからね。できなかった事っていえば…ハイテク関係のあれこれとか、くらいかな?今でもそうだけど」

おどけた調子で言うと、サニーは少しだけ顔を上げて上目遣いにこちらを見て、微かに表情を緩めて頷いた。
それで安心して、撫でるのはやめずに話を続ける事にする。

「だんだん作らなくなっちゃったんだけど、一時期すごく調子が悪くなった時期があってね。その頃からかな、ほとんどキッチンに立たなくなったの」
「……」

心配そうな顔を向けられ、オタコンは安心させるように笑って、頭の手を軽くポンポンと上下させた。

「今は大丈夫みたいだけど、何か思うところがあったらしくて」
「…なにか?」
「うん。多分ね」

食事の用意をしなくなっていった頃に、その事について話をした記憶はない。むしろ食べる物なんか何とでもなるから休んでくれと思っていた。
今とは逆だ。
今は口にこそ出さないけれど、サニーのために、一度くらいは何か作ってくれてもいいんじゃないだろうかと内心思っている。

「何でやめちゃったのかな。僕は聞かなかったから分からないんだ」

当時を思い返しながらそう言うと、サニーはまた俯いて、それから小さく呟いた。

「…お、いしかった…?」
「うん?」
「スネークの…、料理」
「ああ、そうだね。美味しかった」

素直にそう伝えると、触れていた頭の温度が少しだけ上がったような気がした。

「………いいな」

ほとんど聞こえないほど微かに囁くと、耳を桜色にして、ダンボールの縁を握りしめている。
スネークの料理を食べた事があるのが羨ましいのか、美味しい料理を作れるのが羨ましいのか、どちらにしても、きっと切実な気持ちなのだろう。

「サニーの目玉焼きだって、美味しいよ」

下ろしてきた手で背中を撫で、そう言ってはみたものの、彼女には響いていないのだろう、という気がした。
スネークでなくては駄目なんだ、この件に関しては。認めてもらうのも、優しくしてほしいのも、彼になのに。
そう思ったら、下の階で寝煙草なんて危険な行為に及んでいる相棒のことが、とたんに腹立たしくなってくる。
こんなに想われているのに、どうして受け入れてあげないんだろう。
大体大人気ってものがない。昔は散々、自分の方が大人みたいな顔をしていたくせに、一体どうなっちゃってるんだ。

「ああもう、まったく、スネークときたら!とんだ爺さんになっちゃったもんだよ。昔はもっと聞き分けとか分別とかあったんだけどね」
「…じいさん」
「今度からスネークのこと呼ぶ時には、心の中でオールドってつけてやろう。うんそれがいい。オールド・スネーク、ほらぴったりだ」
「オールド…」
「そうとも。お似合いだろ?」

わざと顔をしかめると、サニーは顔を上げてこちらを見て、ぎこちなく眉を寄せて笑った。
その表情が少し、今責めていた相棒に似ている。
彼女はこんな風に影響を受けるくらいにスネークをよく見ていて、だからきっと嫌われている訳ではないと、分かっているのだろう。

「そのうちきっと、ものすごく機嫌のいい時にだったら、また料理してくれるかもしれないし、待っててみよう。待つのもいいもんだよ」
「……うん」
「頼んでもいいけど、またヘソを曲げられちゃうかもしれないしね。お前がやればいいだろう、とか言って、こーんな眉毛でさ」
「…うん、ふふ」

眉間をつまんで不機嫌な顔を作って真似をすると、全然似ていなくても、小さく笑って頷いてもらえた。
その控えめな笑顔ときたら、本当に世界一可愛らしかった。









つづく



 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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