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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  ひとりぼっちの英雄とアヒル[続]  

ひとりぼっちの英雄とアヒル (1):MGS小説。ノーマッド生活とそこに至るまで。…読み切りのはずが!

 



君との間には壁がある。見えない壁だ。
その向こう側から、君はこっちを見ている。
いつもそう。
僕とサニーの間を邪魔しないように、息をひそめて、ずっとこちらを見ている。
いつから、そんな風になってしまったんだろう。





雷電がサニーをうちに連れて来てから、僕は彼女に夢中だった。
小さな女の子が、僕たちの助けを必要としている。その事実が、たまらなく心をときめかせた。
何もかもが彼女を中心に回っていて、だから確かに、君に対しての色々なことが、疎かになってしまったよね。
君はただ黙って、いつもと変わらずに隣にいてくれた。
いつでも。

今日もノーマッドの簡易キッチンの前では、スネークが煙草の煙を換気扇に吸わせている。
ぐるぐると回る羽と睨めっこするか、棚にあるガーコのキッチンアラームと睨めっこするか、いずれにしろ、楽しそうとは言えない。
もちろんそうだろう。僕もサニーも機内の喫煙には反対しているし、彼にとっては部が悪いはずだ。
にも関わらず、周囲の反対を押し切って強行している唯一の嗜好品で、それだけニコチン中毒が酷いのか、もう意地になっているようにも見える。
その上彼ときたら、嫌がらせに別の場所で喫煙したりする意地悪なところもあった。無言の抗議か、話しかけるなって意味だ。
そんなはた迷惑なコミュニケーションツールは勘弁してほしい。
それでも、煙草を吸いたい時のそわそわした感じなんかを見ていると、どうやら一番前者の理由が大きいようだけど。

「スネーク、血圧測る時間だから降りてきてくれ。あと今日は採血もするから」
「んー…」

階下から声をかけたら、やる気のない唸り声で返事が返ってきた。多分煙草を啣えたままだ。

「じゃあ3分後に集合で。折角だからタイマーかけたら?分かったかい?」
「んー」
「ガーコが鳴いたらサニーが行くからね。鳴かなくても行くけど」
「……」

返事がないけど、本当に分かってるんだろうか。
ガーコは黄色いアヒルで、くちばしと足はオレンジ。僕がその昔スネークに送ったキッチンの友だ。
お腹のアナログ時計を使って、卵のゆで頃なんかを教えてくれる頼もしいやつ。
ついこの間、持ち主がサニーに代替わりした。
彼はずいぶん綺麗に保存してくれていて、多少色褪せでもしていなければ、一見新品に見えないこともない。
サニーはスネークに譲ってもらえたとあって、やっぱり綺麗に毎日拭いて飾ってある。タイマーとしての機能は、鳴き声がしてこないのをみると微妙だけど。
使われていないのかも。

サニーは決まりごとにうるさくて、もちろん時間にもうるさい。
決まった生活を送るのが得意なところは、スネークに似ている。でも彼より少しばかり病的で、曖昧な態度は彼女を不機嫌にさせた。
今も3分後は今か今かと、デスクトップの時計を確認しながら待っている。
ガーコの時にもこんなだったら、鳴き声がする前に止めているかもしれない。タイマーを使う意味とかあるだろうか。
そんな風に思っていると、スネークは思ったより早く、二階から下りてきた。

「お、早かったねぇ」

椅子を回して迎えると、サニーも彼を振り返って、ぎこちない動きで椅子から降りた。
やっぱり煙草の臭いがしていて、思わず眉をしかめたら、どうやら彼女も似たような表情たらしく、スネークは僕たちの顔を交互に見て、嫌そうに口髭を歪めた。
それでも大人しく簡易ソファーに腰かけて、腕捲りをしながら待ってはくれる。
血圧を測るのはサニーの仕事だ。やりたがったから。一日のうち朝晩だけでも、こうやって触れあえる時間があるのはいい。

「じゃあ血圧からだ。終わったら呼んでくれよ。薬は?いつもの所に出しといたけど、飲んだ?」
「ああ」
「ほんとに飲んだ?」
「…ああ」

彼の薬は種類と量が複雑で面倒がられたので、毎回飲む分を準備した。
サニーがそういう細々とした決まり事を守ってくれるのは本当に助かる。僕一人だったら、忘れているところだ。
怒ったように返事するところを見ると、まだ飲んでいないようだけど、こういう時は問い詰めないに限る。

「そうか、よかった。じゃあ昼の分も出しとくからね」

こうやって素直に喜んでおけば、彼の律儀な性格からいって、わざわざ薬を飲まずに処分したりはしないだろう。
でも一応、早く飲んではもらえるように、釘だけは刺しておいた。
目を逸らされたのを見ると、もしかしたら飲んでいないと発覚したのに気づいたかもしれない。それならそれでいいし、あとは黙っておくことにする。

彼は自分から寄って来ようとはしないけれど、こうやって僕らが構っていれば、素直に受け入れてはくれていた。
だからなるべく、サニーと二人でスネークのことを考えた。
二人が仲良しになればいいと思う。僕はうっかり、サニーがやって来た当初、誰を置いてもサニーと仲良くなろうとしてしまったから。
それはあまり褒められた行動じゃなかったと、今では思う。
黙っていれば、サニーはスネークを好きになるって分かってはいたけど、まさか彼の方が頑なに、僕らと距離を取ろうとするなんて。
そんなこと微塵も、考えもしなかった。

「ハルにいさん、終わったよ」
「え?ああ、そうかい?ありがとうサニー」

デスクトップから目を離すと、声の主はきちんと血圧値をパソコンの記録に打ち込んでいた。
グラフ表示と薬の有無で、今後の予測ができるようにプログラミングしてある、サニー独自の記録ソフトだ。
彼女がいいと言うので、今度医療関係者に提供してみようと思っている。意見を取り入れて改良すれば、商品にできるかもしれない。
ちょうど医療機器の技術開発に、アドバイザーとして参加しているから、その関係でつてがあった。当然身分は詐称しているけど。

「よーし、じゃあ今度はこっちの番だ」

採血の準備をしたトレイをテーブル代わりのボックスに置いて、スネークの正面に座る。
すると僕が血を採る気満々なのを見て、目の前の相手は心底嫌そうに眉をひそめた。

「寝ぼけてるのか、それとも陽気のせいか?」
「寝てないよスネーク、寝てない」
「貸してみろ、採血くらい自分でやる」
「そう言わないでさ。任せてくれ、静脈探すのだって上手くなったろ?」

除菌用のハンドジェルで手を消毒しながら、わざとらしく笑って見せたら、彼はうんざりした顔で腕を差し出した。
おおかた、以前慣れなかった頃に散々酷い目に遭わせられたのを思い出したんだろう。
嫌がっても、駆血帯は既に巻かれていて話が早い。

「動脈採血は勘弁しろ。呼吸器系には問題ないからな」
「だからもう大丈夫だって。君のおかげで」

針を刺される本人に指導を受けながら採血するなんて、なかなかできない経験だ。この腕に一体何回針を刺し損じたことか。今思い出しても痛々しい。
昔に比べて細くなった腕の内側を、軽く叩いて血管を浮かせて、指で確認する。柔らかく弾力のある管を感じたら、そこにアルコールを縫って、寝かせた状態で採血針を刺した。
初めの頃は僕の方が、気分が悪くなりそうな作業だった。

「痛くないかい?」
「ん」
「君の血管は優秀だよね。他のに刺したことないから何だけど」
「刺してみようとか思うな。悲劇だからな」
「それは認める」

話しながらホルダーに採血管を差し込んで、暗い色の赤い血液が管に流れ込むのを一緒に眺めた。

「人って慣れれば慣れるもんだよ」
「確かに。この程度で青くなってた頃が懐かしいな」
「え、僕がかい?…あれおかしいな、他に誰も思いつかない」
「そうだろう」

とぼけながら、血で一杯になった管をホルダーから抜くと、スネークは黙って駆血帯を外し、手も開いた。親指を中に手を握るとか、指示を出し忘れていても、至らない部分はフォローしてもらえていて助かる。
何でもそうだった。
針を抜けば、やっぱり自分でアルコール綿で押さえながら、用は済んだとばかりに立ち上がって行こうとする。
一家の団らんも、血を採ったらおしまいだ。

「絆創膏あるよ」
「いらん」
「そうかい?じゃ献血どうも」
「俺の血じゃ、もらった方が危険だがな」

振り返って少し馬鹿にしたように笑うと、彼はゆっくり階段を上っていった。
パソコンを離れて階段下まで見送るサニーに、声をかけてくれないかと思ったけど、残念ながらそれはない。

「よし、こいつにはサンプルとして活躍してもらうよ」

二階を除き込む小さな背中に明るく声をかけると、彼女は諦めたようにこちらに戻ってきた。

「また煙草吸ってるかい?」
「…うん、たぶん」

怒ったような悲しいような顔で俯いてしまう様子を見たら、心配なんだと分かる。
サニーはスネークが好きだ、腹を立てても。好きだから腹を立てるのかもしれない、僕だってそう。
スネークだってサニーを好きだ。話をしなくても、本当はそう。でも小さな子に、それで分かれっていう方が酷だ。
分かって欲しい訳じゃないんだろうけど。

「あの年で肺癌にならないって、さすがスネークだと思うよ。きっと長生きする」
「やめれば、…もっと長生きするかも」
「うん?うん…、そうかもしれない。でも分からないなぁ。好きなものがない人生って、味気ないしね」
「…好き…って」

彼女は微かな声で反論しようとして、やめて足元に視線を落とした。その言わんとした内容が、僕には何となく分かってしまった。
自分達と煙草と、どちらがより好きなのか。
優先させて欲しいのだろう。嗜好や彼自身より、長生きや一緒にいる時間や、空間を。
彼が急激に歳を取るのを目の当たりにしてきて、そう思うのは自然なことだ。でもそれは勝手な願いで、だから最後まで口にできなかった。
彼女のものの考え方は、どうやら少し僕にも似てきたらしい。まるで自分の思いのように理解ができて、思わずその銀髪の頭を、肩口に引き寄せていた。
頭の側面を合わせると、耳に少し高い頭皮の体温を感じる。

「スネークも勝手だね。でも本当は、サニーや僕のことも大切に思ってるんだと思うよ」
「……」
「ただ今は少し、何を励みに生きていったらいいか、分からなくなっちゃってるんだ」

未来に待っているものが、何もない。ずっと目の前にあった使命も、なくなってしまった。

「目標を見失って、悲しいんだ。多分」

肉体が年老いてから、彼は自分のことを、色々と諦めてしまったようにも見える。投げやりな態度を取っているように。
唯一戦えるという価値を失って、愛国者達の広める戦争経済や、それに伴うメタルギア技術の一般化、企業への採用。
それを僕らは、手をこまねいて見ているしかない。
彼の胸にある、日々の焦燥感と失望感はいかばかりか、と思う。
常に使命を抱えていた人間が、それを満足にこなせなくなって、お荷物になったと感じたら、どうだろう。
スネークは今、自分の存在に、意義や意味を見いだせないでいるんだ。
何のために生きているのか、必要な事は何一つできずに。

それでも、生きてもらわなくては。
僕やサニーのために。勝手な都合と言われようが構わない。嫌われようと。
大それた事は何一つなくたって、何も成さなくても、無意味でも。
生きていてくれるだけでいい。

僕はもう長いこと、そう思ってきた。
長いこと。





あれはビッグシェル事件から大分経ってからのことだ。
僕の辿った情報を元に、スネークは雷電と共にサニーの救出に向かっていた。その施設で、彼は急に体の変調をきたした。
明らかにおかしかった。心拍数、呼吸、体温も急に上がって、とても任務が続行できるような状態じゃない。
作戦は中断せざるを得なかった。失敗だ。
それは彼の体調のせいだけじゃなく、情報が漏れていたのか偶然か、サニーは身柄を移動させられていて、施設には既にいなかった。
雷電がいたおかげで、スネークも無事に脱出できたようなものだ。そうでなければどうなっていたか。

後から分かった事だけど、僕らはビッグママの計画の一部として使われたらしい。
サニーが居場所を移した事で、最終的に雷電が救出に向かう隙を作れたとか、そんなところだ。
スネークはその頃から目に見えて老化が始まり、体の器官が機能障害を起こし、驚くほど体調を崩して寝込んでしまった。
普通なら入院だ。でも僕らはお尋ね者で、スネークは顔も知られている上、死んだことになっている。
病院に行くわけにはいかなかった。









つづく


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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