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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  月のうらがわで  

月のうらがわで:MGS小説。コンビお二人の、友情の始まり。

 



黙って3日、家を空けた。

セーフハウスに来てからというもの、ほとんど外に出ていなかった。
オタコンは部屋に籠りきりで何かをしていて、仕事部屋にした二階の一室から出てくる気配がない。
一応食事らしきものを用意して声をかけてはみてはいたが、反応も薄かった。

用意をすればそのうち食べるし、なければないでシリアルや冷蔵庫にある、すぐに口に入りそうな物を腹に入れているようだ。
そうなったら3日はかかりきりで何かをしていると、ここに来る前の経験則で知っていた。

だから別に構わないだろうと思った、自分が家の中にいようがいまいが変わらないと。
たった3日だ。
何か変わった動きがあったら分かるようにセキュリティも入れてある。
オタコン1人くらいでも3日くらい過ごせるだろう。
子供じゃないんだ。

そう、ほとんど自分に言い聞かせるようにして出かけた。
要するに一人になりたかったのだ。

四六時中自分以外の人間と閉じ込められていたのは、軍にいた頃、しかも単独任務に従事する以前の話だ。
今は他人と暮らすことに、時々無性に息苦しさを感じる。

普段は何でもない、あまりオタコンに文句もない。好きにやっていればいい。
だがふと、耐えられなくなる時がある。
どこかもうここでない、自分を知る人間のいない場所で過ごしたいと思い、バカなことを考えたりもする。

月に行けたらいいのに、と。


セーフハウスに来る前は、何かと気がかりな事も多く、生活能力のない男を一人、そこらの部屋にほっぽっておくのも気が引けた。
だから自然、年中一緒にいる事になったが、そんなに心配せずともよくなった以上、放っておいたっていいはずだ。

少し前まで好きな女と暮らしていたが、やはり息苦しさは変わることがなかった。
きっと何かしら自分だけの問題なのだろう。

彼女には、メリルには気の毒な事をしたと思う、見知らぬ土地で、突然恋人が帰ってこないなんて、普通に考えたらありえない事だ。
あの時はまだ2日だったが、怒った彼女と口をきいてもらうまでには更に3日必要になった。
一人になりたかったら喧嘩をすればよかったなんて、とんだ笑い話だ。

そこへいくとオタコンは別に恋人ではないし、行き掛かり上一緒に暮らしているのであって、自由に行動したって構わないはずだ。
そう思って自分を正当化しようとしたが、玄関ポーチの階段を上った所で、何となく足が止まったままになる。

落ち着かない時の癖で、つい煙草に手が伸びた。
なぜ罪悪感を感じなければならないのか分からないが、とにかく後ろめたいような気持ちは拭えない。
おかげで帰ってくる間に、何本か小さな酒瓶を空けた。あまり誉められた帰宅ではない。

メリルの時のこともある、責められる覚悟をしておいた方がいいのかもしれない。
いっそこのまま帰らないという手もあるな、などと煙草をくわえたまま火もつけずにしばらく考えていると、視線の先のドアノブが動いた。

ヒヤッとした。
一体どんな顔がドアの向こうから現れるかと。

玄関扉が開き、ボサボサの髪を後ろに流し、少しずり落ちた眼鏡に無精髭の、いつもの顔が覗く。

「なにしてるんだい?さっきからずっと」

声の調子が普段と変わらないのに安心し、目を見ると、やけに赤い。

「…寝てないのか?」

何か他に言うべきだと思ったが、口をついて出たのはいつもの台詞だった。
すると目の前の男は、何かに気づいたように眉をひそめる。

「うん…まあね。なんだ、もしかして随分飲んでる?すごい酒臭いよ」
「ああ、まあ、今しがたちょっとな」
「ちょっとね、君のちょっとだからね」

あきれたようにそう言うと、オタコンはドアから離れ、正面奥のリビングに向かってふらふらと歩いていった。
何だか心配になって、ベットに直行するのを取り止め、煙草を仕舞って追いかける。

この男が寝ていないのは珍しいことではないが、それにしてはいつもより消耗しているようだ。
自分のいない間に何か起きたのかもしれない。
うっすらと責任を感じた。

「何か問題でもあったのか?」

リビングに入り、ソファーに身を預けたオタコンに向かって尋ねてみる。
尋ねられた方は、眼鏡の内側に指を入れて目を擦りながら面倒くさそうに言った。

「べつに。しいて言うなら君が行方不明だったことくらいかな…」
「行方不明?」
「でもどうやら好き好んで行方不明になってたみたいだから、問題でも何でもなかったね」

オタコンは少し恨めしそうに言ったが、なにがしか納得しているようで、怒っているわけではなさそうだった。
てっきり責められると思っていたので、気が抜ける。同時に悪いな、という罪悪感が生まれた。

「すまん。…次から連絡する」
「うん、そうして。まあ僕も聞いてなかったりするからな、メモでも置いてってくれる?」

眠そうにクッションにもたれかかると、眼鏡を外し目をつぶる。もう寝ようかという態勢だ。

「寝るならベットに行けよ」
「うん」

声をかけても返事はするが、動く気配がない。
何だろう、妙な感じがする。
オタコンは自分が気にくわない行動を取った場合、こんな反応をするやつだったろうか。
別にどうでもいいのだろうか、ならば構わないが。

「オタコン」
「…ん?」
「寝るならベットに行け。担いで行った方がいいか?」

もやもやと、余計なことを考えて、余計なことを口にした。
ソファーの男の目が開いて、こちらの方を向く。どこを見ているか分からない、ぼんやりした目だ。

「迷惑ならそう言ってくれりゃいいよ。僕だって、そこまで鈍感じゃない」
「迷惑だのって話か?ソファーが埋まってるくらいどうってことないが」
「そうじゃなくてさ…」

オタコンはクッションから身を起こすと、疲れたように前屈みになり、両肘を膝の上に置いた。
顔だけ少し上げ、こちらを見る。
どうやら話をする気になったらしい。

「つまり君はさ、僕のこととかどうでもいいんだろ?むしろ転がり込まれて迷惑してる」
「別にそんな風には思ってない」
「いいんだ、これはね、君の行動を見て、僕が勝手にそう思ってるだけだから」

いいのか?何だか話の趣旨がいまいちよく分からない。この男の話のし方は、時々訳が分からない。

「気に入らないことがあるなら言え」
「そう?君こそ気に入らないことがあるなら言ってくれよ」
「別にない」

そう言うと、オタコンは眼鏡をかけ直し、視力の戻った目でこちらを見直した。
不思議な顔をしている。不思議そうなのではなく、なんだかいつもの表情ではない。

「それ本当?」
「何がだ、迷惑なんて思ってない。何か問題があるなら言え。文句があるなら聞く」
「僕が文句言うような事を君がした、って思ってるのか」

ずっと冷静な声を出され続け、だんだん腹が立ってきた。責めたいならはっきり責めたらどうなんだ。

「ああ、そうかもな。少なくとも前に言われたことがある」
「前に文句言われたことがあるのにやったんだ。それはあれかい?僕だったらいいかって思ったから?」
「まあそれもある。ダメだと思ってもやった可能性もある。一人になりたかったんだ」
「……。ああ」

急に、オタコンに表情が戻った。何か思い当たる節でもあったかのような反応だ。
一人になりたきゃ家の中でだってなれる、3日もかけて逃げ出すようなことでないのも、分かっている。

そう、そして、それが相手を傷つける行為だということも。
メリルがいかに自分にわだかまりを感じたかも、分かっていた。

自分に問題が、多分どこか欠陥があるのだろうと、分かっていた。

「そう、じゃあいいよ。もういい」

そう言って、オタコンはまた眼鏡を外し、もう一度ソファーに倒れこむ。
諦められたようだ。それならそれでいいが、今後どう行動したらいいのか微妙に分からない。
これからのことに結論が欲しかった。

「…それで?俺にどうしろって?」
「だからいいんだって、もう分かったから。好きにしていいんだ。僕も好きにする」

自分で聞いておいて何だが、相手のもの言いにカチンときた。こいつは俺を怒らせたいのかどうなのか、乗ってやって苛々を表に出すべきか。
一瞬そんな風に思ったが、バカらしいのでやめておく。

「よし分かった。好きにしていいんだな。じゃあそうするさ。他に何かあるか?」

話を切り上げて部屋に行って休もう。もう知らん。
何となく自分が理不尽に相手に腹を立てているような気がしたが、悪いとは思わなかった。

「ああそうだ、一つだけ。どんな気持ちだったか聞かせてくれよ。行方不明になる時」
「……別に。何となくだ」
「何となく?」

答えたつもりだったが、相手が待っているようなので付け加えた。

「月に行きたかった」

するとオタコンが小さく笑った。
バカにされたのかと思い見下ろすと、意外にも困ったような顔をして、小さく笑いながらこちらを見ている。

「…そうか。月世界にひとりぼっちか」

懐かしそうに呟かれた、その声を聞き、まるで憑き物が落ちたように、苛々が消えた。
この男には分かるのだ、あの感覚が。

「でも知ってる?月には宇宙人がいてね、意外と賑やかなんだよ」

茶化すようにそう言われ、何だかおかしな気分になる。
今まで、こんな風に理解されたと感じた相手はいなかった。

「そいつはうるさそうだな」
「そうそう、結構放っておいてもらえないもんなんだ」

とたんに、部屋の空気が緩む。いつものオタコンの、和やかな話の雰囲気が戻ってくる。

「君はさ、考えたことあるかい?誰かが、君に悪いなと思ってるとか、君がもう帰ってこないんじゃないかとか、野垂れ死んでやしないかって考えて眠れなくなってたりするってさ」

にこにこと眠そうに話をするオタコンの、しかしその内容は、答えづらいものだ。

「きっとないんだろ?」
「……」

ないと言ってしまえるだけの厚顔さはなかったが、確かに見に染みて誰かの心配を感じたようなことはなかった。
メリルにも、それを悪いなと思ってはいた。

「君ってやつはさ、何でもそう。自分は他人のこと気にするのに、人には気にかけてほしくないんだ」
「…そうだとして、何なんだ」

今になって責められ始めたのだろうか、先ほどのようなささくれ立った気持ちにはならないが、居心地の悪さは感じる。
オタコンは、半分目を閉じながら笑い、穏やかに話を続けた。

「でも僕は気にしたいからするよって話。迷惑なら迷惑でもいいんだ。好きにするから」

またしても肩透かしを食らった。この件に関して、もう自分が何か言われることはなさそうだ。
ホッとする。
子供の頃、施設で時間に遅れた日、まだ自分の食事が用意されていた時のことを思い出した。
やけに安心した、あの感じに似ている。

「だって君はね、月の裏側の住人だからね。あそこで宇宙人と暮らしてるんだよ。でも大丈夫、そのうち戻ってこれるさ、ちゃんと地球に」

お伽噺のように自分の話をされ、端から見たらおかしな風景だろうと思いもしたが、それが別に嫌ではない。

「だからね、大丈夫だ…」

よほど眠かったのか、最後の言葉は途切れるように終わった。

「お前も宇宙人といたことがあるのか?」

気がつくと、自分も少し笑っている。
モゴモゴと何か口の中で返事をするオタコンを、改めて眺めた。
こんなに自分とはかけ離れたように見える男の中にも、何かしら同じような部分があるのだ。

「そうか、お前は来れるんだな?昔いたことでもあるんだろう」

どことなく幸せそうな寝顔を見ていると、きっとこいつは頭の中で、自分と二人で宇宙人と楽しくやっているのだろうという気になった。

それもいいかもしれない。
本当に、いつか地球に戻れるのかもしれない。
他人の気持ちを感じられるように、なるのかもしれない。

宇宙人だと思っていたやつらが実は人間で、月だと思っていた場所が実は地球だったなんて、そんな映画のような結末で。


それまでは、こいつと一緒に暮らすのも悪くない。

あの、月のうらがわで。








END

 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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