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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  あの空、透明な空  

あの空、透明な空:MGS小説・短編

 






「オタコン」

遠くに小さく、スネークが自分を呼ぶ声がする。

今日は青空だ。澄み渡る色の空。
高い場所に薄く綿を広げたような雲が浮いて、流れていって、見えなくなる。
太陽が白く光って、世界は明るい。
そしてどこまでも、続いている。

草の薫りがみずみずしくて、いい匂いだ。
仰向けに、それに包まれている。
風が吹くとその草たちがいっせいにたなびいて、さわさわと、いい音がした。

「オタコン、どこだ」

彼が自分を探す声を聞くのが好きだ。
まだそこにいると実感できて。
まだ必要とされていると、分かるから。

たくさん聞いて、耳に焼きつけておくために、見つからないように息を潜める。
草に優しく埋もれて、自分の前面には空が、一面に広がっている。
それからスネークの声。

「オタコン」

ずっと見つからなければいい。
ずっとこのままがいい。
この時間が透明に固まって、いつまでも暖かな日差しが、続けばいい。
彼の声と一緒に。

今が一番、全てがそろっているから。
ここには、何もかもがある。


希望も絶望も、すべてが。



スネークは自分より先に逝く。
分かっていることだ。
自分は、この手のひらで、彼を失う時に触れていられるだろうか。
どうしたらその最後の声を聞いて、最後の息が、彼の口から漏れるのを、見ていることができるだろう。

でもきっと、大丈夫。
それはどうにかできることだ。
いつだって、彼を失う恐怖に冷や汗をかきながら、彼を助けに向かっていた。
焦れる感覚と、絶対にどうにかするという確信。
だから必ず彼を見つけたし、この手に取り戻してきた。
現実にだって、神様にだって、取り上げさせやしない。
自分より大切な、友達を。


でも、そう、今は分かってしまった。
本当は分かっていた、本当には。

僕は勝てない。
現実や、神様に、僕は勝つ術がない。
どんなに願っても、スネークをとどめておくことはできない。

彼は僕より先に逝く。
だから、せめて彼をこの手から、失わなくてはならない。
この手のひらから。


風が大きく草の原っぱをうねらせて、ひときわ大きなざわめきが起きる。
遠くの海の薫りも微かに届く。
ノーマッドの格納庫から程近い、だだっ広い草原で、寝っ転がって、空を見ている。
空には、いつもすべてがあるから。

こうして、胸を押し広げて、何もかもが漏れだしてしまいそうな想いも、本当は小さなことだ。
あの空の向こうでは。
あそこではすべてが起きていて、自分のこの気持ちも、些細に存在する砂粒みたいなものだから。
だから、いいんだ。
何もかも、これでいいんだ、間違いはない。
これで、いいんだ。



以前こんな気持ちになった時には、真冬の空の下だった。
やっぱりスネークが自分を探していた。

多分何か言い合いをして、それで頭を冷やそうと外に出たんだ。
寒かった。
コートを着て出はしたけれど、空気は刃物みたいに冷たくて、澄んでいた。
初めは色々なことが頭に浮かんで、腹が立ったり、悲しくなったり。
でも星が綺麗だった。
遠い過去の瞬きするような光が、ちらちら輝いていた。
いくつも、いくつも。

自分の怒りを光にして、あの星に届けようとしても、きっと光が弱くて届かない。
それどころか、自分の命を光にしても、今見えている星からは見えないだろう。
そんな気がした。

一体、どれだけの想いを集めたら、空の向こうまで、通じるだろう。
どれだけ手を伸ばせば、光に指をかけられるだろう。
ちっぽけな、些細な自分の想いが、どれだけあったら。

怒りも悲しみも、喜びさえも、あそこに行くには足りない。
そう思ったらなんだか、何もかもが許せる気になった。
自分さえ。
いいんだ、自分も、スネークも、これでいいんだ。
なにも責めることもない、だれも。

寒くもない、夜空はすべてを肯定していたし、とても落ち着いた気持ちだった。


気がついたらスネークが目の前にいた。
怒ったような、悲しいような、さっきの自分の感情のような顔だった。

「帰るぞ」

でも声は静かだった。
今の自分の気持ちみたいに。

「うん」

もし、スネークが必要なら、自分は彼の変わりに命を差し出したっていい。
ふとそう思った。
でも、すぐに気がついた。
目の前の男は、そんなことは望まない、自らがその身を差し出したいに違いない。
他の、何かやすべてのために。

だから、自分は、彼が望みのままにできるようにしなくてはならない。
彼が、心置きなくその体を、誰かや何かのために、投げ出せるように。
そして、その誰かや何かは、自分であってはならないんだ。
そう、確信した。

手を掴まれて帰って、コートを脱いで、部屋の中に入った。
やっと人間に戻ったような気がした。
それくらい、心が透き通ったようだった。
あの夜と、あの夜空。




今、あの時とは違う、明るい空と暖かい空気。
空には星も見えなくて、でもあの夜よりも透き通って見える。
ずっと遠くまで続いている空。
ずっと、彼方まで。

「オタコン」

気がつくと、やっぱり目の前にスネークがいた。
足元の方、目を向けるとわかる位置。
そこからゆっくりと歩いてきて、横から覗きこんでくる。
白っぽく髪の毛が透けて、とても綺麗に光を含んで見える。

「起きろ」
「寝てないよ」
「だったら返事くらいしろ」

憮然とした顔をされて、思わず笑顔になってしまった。

「君も横になってみなよ、きもちいいから」

そう告げると、スネークはしばらく何か言いたそうに自分を見下ろしていたが、やがて視界から消えた。
隣に座り込む音がして、背中が見え、それが倒れ込んでくるのが見える。
一緒に、気持ち良さそうに漏れるため息のような声が聞こえた。

「年寄りくさいなぁ」
「何とでも言え」

笑いながら顔を横に向けると、両手を頭の後ろで組んで、くつろいで目を瞑っている横顔が見える。
よかった、気分はいいようだ。

二人して黙って、草の上に転がっている。
それがなんだか、まるで素敵なことでもしているような、満たされた気持ちになった。

多くを望みはしない、大それたことは、なにも。

ただ、この大切な、かけがえのない友人の、望みだけが、自分の望みだ。

それ以外は欲しがらない、なにもいらない。
自分のものはなにも。

絶望はもうない、失うのも怖くない。
悲しくもない、満たされていて。

希望も、もうない、叶うような望みもない。
スネークがいなくなるなら、意味がない、なにを願っても。

だから、なにも感じない、すべてを肯定できる。
今なら。


「いいもんだな」

ぽつりと、スネークの声がした。

「そうだね」

それだけで、もう、十分な気になる。
世界も、現実も、神様ですら許せるような、そんな気分に。

だれにも、この気持ちを台無しにすることなんかできない。
誰にも、何にも。

あまりにも何もかもが、揃っていすぎて、胸が張り裂けそうになる。
裂けてしまえばいい、溢れてしまえばいいのに、自分のすべてが。
そうすれば、楽になれるのに。

でもまだ、あの透き通る空の向こうまでは、きっと届かない。
この自分にとってのすべてのような想いすら、やっぱり何でもないことなんだろう、あの彼方、あの遠い場所では。
だから、この先、どんな想いに駆られようと、それも些細なことだ。

すべてがただあって、ただあるだけでいい。

スネークが、いようといまいと、自分が、生きていようと消えてしまおうと。

変わらない、何にも左右されない。
今と、変わらない。

そんなふうに生きたい。
そんな心で。

「スネーク」
「ん?」
「…世界はなんて、完璧にできてるんだろうね」


そう。
あの、空のように、透き通って。

















END

去年の6月に、突然夕方から夜にかけて書いた1本。
なんだか思いつきの勢いな感じですが、大事な感じの部分だ。私にとって。
この世で最もかけがえのない価値は、個人の想いを越えているものなんだと思う。
命や存在そのものを表す愛は、慈しむ愛よりも厳しく、自然だ。
そんな…まぁうんそんな(笑)





 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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