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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  満ち足りた晩餐  

満ち足りた晩餐:MGS小説。食事にまつわる視点からの、スネークさんのお話。

 



食事というのは生命維持の手段だ。
睡眠の次に強い欲求で、この二つが満たされていて初めて、性欲が湧く。
そうでなければ肉体は、自己が生き残るのを最優先に活動し、正しい順番で本能を満たす。
肉体的極限では、空腹で寝れないなどという事はないようだ。
また飢えに苦しむ中、生殖的な欲求も起きないらしい。

軍では環境的極限の中でも、そういった肉体的な極限状態に至らないために、サバイバルの訓練を学ぶ。
また極限に近付いた際に、保てるだけの精神力を身に付けられるよう、訓練によって肉体を痛め付ける。



食事は味も充実していればなおいいが、自分にとってはバランスの方が重要だった。
犬と暮らしていた頃は、外食でなければ毎日3食同じものを食べた。
野菜、果物、牛乳、肉、炭水化物。朝食には卵も。たまには魚も食べたが、大体決まったメニューで済ませていた。
レーションが手に入れば言うことはなかったが、ルートから居場所がばれる危険性もあった。横流し品は賞味期限をはるかに過ぎている事も稀にある、あまり当てにはしたくなかった。
それに現役と同じだけの訓練量は難しい。カロリー重視のレーションは、田舎暮らしには不向きだった。
そうなると自炊が一番手っ取り早い。
気の利いた料理なんてものはしなくていい、食える物が、人間の食事らしくなればそれで。
卵ならボイル、野菜はサラダにすればいいし、肉は焼けばいい。ベーコンや、ハーブの効いた腸詰めだったら、味付けさえ気にしなくてよかった。
一人の食事で、準備に時間をかけるような事はしなかった。

犬の食事は人間より先だ。
家の中に入れた犬でも、食事は全員一緒にさせていた。
だから現役を退いてから、誰かと向かい合ってまともに食事をしたのは、メリルとが初めてだった。
そうでなければ、たまには店で飲んだりもしたし、時には見知らぬ相手と食事もした。食事が目的ではなかったから、味の記憶はあまりない。


メリルは意外に料理が上手かった。意外に。
もちろん軍でも食事の確保は重要だが、彼女の料理は多分家庭の味というのだろう、軍の食い物と違い、香りや味付けに、独特の細やかさがあった。
それで作りは雑だったが、味は実に良かった。
たまには一緒にキッチンに立って、彼女が教官になった事もある。
戦闘の訓練を見てやるのと交換条件だった。
女性の教官というのも、なかなか悪くはないものだ。
少しくらい呆れた顔をされた方が、気分は盛り上がるというものだった。

何しろメリルをアラスカの家に迎え入れた当初、毎日寸分違わないメニューが食卓に並ぶのを見て、彼女は目を丸くした。
一人でいて、義務で食べる食事とは違うという認識は勿論あった。
本当は何か、もっとましな物を作るべきだろう、と分かってはいたが、どのみち長くは続かないだろうと思ってやめた。
数日経たないうちに、彼女も料理部隊に参戦するようになった。

初めて彼女の食事を提供された日、あれは夕食だった。
いつもと同じ食材で、全く違う料理が出てきて驚きだった。
どういうわけか、テーブルクロスが新調され、ささやかだが花が飾られていた。
メインにはローストポーク、栄養面から考えて、家にはほとんどの場合、鶏肉か豚肉しか置いていなかった。
スープや、サラダには手作りしたドレッシングも添えられていた。付け合わせも数種類、果物はデザート用に加工されて、自宅のテーブルではついぞ見た事のない、賑やかな風景が広がっていた。
感動的と言ってよかった。

「初めてだから張り切りすぎたの。毎日は期待しないで」

頑張って作ったのが恥ずかしいと言うように、彼女は赤くなりながら眉間に皺を寄せていた。
それはそれは美しい、しかめっ面だった。

いざ食卓に付くと、あまりに心配か真剣かという眼差しで、食べるところを見つめられ、初めは正直出された物を味わうどころではなかった。
旨いと一言告げてからだ、本当に香りも味もいいと分かるようになったのは。
ホッとして緩んだ彼女の表情を見て、やっと味覚が戻ってきた。
とりあえず舌に感じた味の話をした。
メリルは嬉しそうに瞳を輝かせ、作り方のコツや秘訣を教えてくれていた。
その様子に気を取られ、彼女を見つめながら食事をするのに忙しかったので、料理の講習内容は全く記憶に残らなかった。
覚えているのは、彼女がフォークを口に運ぶ様子。口を動かし咀嚼するか、話をしているか、輝かんばかりの笑顔ばかりが、脳裏に残っている。

普段は年若い娘さんに酒を勧めるのは遠慮していたが、この日ばかりは彼女のグラスにワインを注いだ。
薄紅色の頬は、触れたら指先が溶けこうに柔らかく、温かだった。

「なに?何かついてた?」
「いや」
「なによ、変な人ね」
「アルコールは程々にな」
「あなたが注いだんでしょ?」

ふわふわと可笑しそうに声を立てて笑うのを、ずっと見ていたかった。

「そうだったかもしれん」
「やーね、もう酔っぱらったの?」

この女が、ずっと笑っていればいい、そう、本気で思った。


人生で、あれほど胸の一杯になった食事は他にない。
腹だけではなく、どこか別の部分も食物で満たされ、満足だった。

あまりにも満足だった。



あれから、食事に対する概念は変わったと言っていいだろう。
食事には、一手間だけ加える習慣ができた。料理に関してはあまり優秀な生徒である必要がなかったので、真面目に取り組んだ事がない。

「スネーク、あなたって驚くほど何でもできるのに、なんで料理だけはからっきしなの?」
「それはあれだ、君の料理を食べたいからだな」
「それ本当?」
「そうとも。実はこれだけは苦手って訳じゃない」
「…苦手なのね?」

彼女はそう結論付けると、なぜか嬉しそうにしていた。

「よかった。あなたって何だかスーパーマンみたいなんだもの」

いつだったかに聞いた事のあるようなニュアンスの台詞だ。
スーパーマンが好きなのは、もしかして子供だけなんだろうか。


彼女は、軍人になりたいと願いながら、どこか普通の女性らしく、家庭を築きたいと思っている節があった。
自分を飾り立てたり、恋愛に興じたりという事はあまりなかったようだが、家庭の中で女性が担う役割と思われるような事は、一通り進んで教わってきたらしかった。
それがどういう事か、想像してみれば分かることだ。
二十歳間近とはいえ、まだハイティーンの娘だった。

どうしたらいいか、分からなかった。
いや、分かっていたが、それを実行に移せるだけの遂行力と度胸が、自分にはなかった。



あの二人の家から、逃げる口実を与えてくれた男と、今度は一緒に暮らしている。
成り行きだ。
初めはそんな気は更々なかったので、短期でアパートメントを転々とした。
当然食事は外食かテイクアウトだった。
やがて様々な理由から、最後に残っていた一番安全なセーフハウスにまで、相棒として迎え入れる羽目になった。
こことは別に、新たなセーフハウスを見つけなければと思ってはいるが、今のところまともな候補がない。

今いるのは郊外の小さな一軒家だ。襲撃があっても他人に迷惑のかからない場所だった。
当然街までは、車でそれなりの距離がある。
そうなるとまた自炊するしかなくなった。
初めて夕食を出したら、相棒にも、やはり目を丸くされた。
何の事はない、いつものメニューだ。

「わお、君料理もするのかい?」
「よく見ろ、料理なんて代物じゃない」
「…よく見たけど、カフェの朝食に比べてもポリューム満点だし、こういうの料理って言わないの?」
「言わないな」
「じゃあ何て言うんだい?」
「食材を食える形にして並べた、ってところだ」

オタコンは眼鏡を持ち上げながら不思議そうな顔をしていた。

「それって料理には入らないんだ?」
「朝昼晩、これだ。料理が食いたきゃ外食するんだな」
「3食こんなに食べるなんて贅沢だねぇ。僕には無理かも」
「分かってる。シリアルも買ってあるし、好きにしろ」

それまでの生活で、この男がメリルよりはるかに少食だという事も判明していた。
それでもその日は、普段より量を食べたという気がする。
食卓というのは、説明の付かない何かが働きかけているのかもしれない。
普段は流し込むように食べる目の前の男が、きちんと物を噛んで味わう様子は、見ていて悪い気がしなかった。

「食べられる形にして並べただけにしては、随分美味しいよ。サラダの味付けとか」
「そうか。だったら運が良かったな」
「え、どういうこと?たまたまかい?」
「明日も食ってみれば分かる」

自炊のお陰で夕食だけは、オタコンも大抵一緒に食事をするようになった。
一日のうちで一食でもまともなら、健康管理も大分違うはずだ。
それだけは、この男と暮らして良かったと思う点だった。
それくらい、相棒の見た目も生活習慣も、不健康を絵に書いたような酷いものだった。

毎日同じようなメニューでも飽きられないよう、一応毎回味を変えた。
手間だったし、時にはおかしな味の物が出来上がったが、相手はそれが気に入っているようだった。
宿泊先のホテルや何かで、まともな料理を食べたりするようになってから、ネットから落としたレシピを印刷して持ってくるようにもなっていた。

「スネーク、忙しいかい?」
「忙しいな」
「本当?できたらその用事の中に、ぜひこれも組み込んでくれないかな」

渡されたレシピは鴨のローストだった。オレンジソース。
買い出しで鴨をリクエストされたのはこの為かと思い、うんざりした気分になる。

「また洒落たもんに興味を持ったな」
「オレンジソースって美味しそうだからさ。そういえば鶏のサンドイッチもベリー系のソースの時あったね。あれも美味しかったし」

確かに鴨は柑橘系のソースが合う。ローストも習うには習ったが、あれは時間がかかってやる気がしなかった。
渡された紙を相手に押し付け返す。

「料理はしない」
「頑なだなぁ。だったらその鴨をさ、食べれる形にして、オレンジ味のソースをかけてくれるだけでいいから」
「お前な…」
「ダメかい?」

いつも大体こんなような手で、作った事のない物に挑戦させられた。
この食生活の破綻した男が食いたいと言うからには、作らないという選択肢はなかった。
どうせ作るのなら、慣れた調理方法の方がいいに決まっている。

「だったらグリルのレシピを持ってこい。それなら食える形にしてやる」
「ローストと違うの?」
「ローストは大体オーブンを使うが、グリルならフライパンだけでいける」
「へぇー、違うんだ。じゃあそっち探してくるよ」

オタコンはいそいそと仕事部屋に戻って行った。
一般にはグリルの方が難易度が高いが、ローストよりもそちらの方が、なぜか好評な味になる。
メリルにも、どうして難しい方がましな出来になるのかと、不思議がられたものだった。
火にかけている間、嫌でも食材の世話をしなくてはらないからかもしれないが、要は焼くだけだからだという気もする。

「オレンジソースか、それが曲者だな」

食える形にするだけとはいえ、作るからにはぜひとも完食してもらわなくては。
そう思うと、多少はやる気になってきた。
興味のあるメニューが出される時には、食欲の希薄な相棒も、満腹になるまで食事をするらしかった。
よく喋り、あの男にしてはよく食べた。
誰のものでもそうだが、美味そうに食事をする姿は悪くない。
食卓ってのは、多分そういうものだ。

棚にある籠から丸いオレンジを掴むと、その甘く爽やかな匂いを、肺一杯に吸い込んだ。








END



 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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