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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  少年ダビデ  

少年ダビデ:MGS小説。4の中東で倒れた後。

 



少年が一人、荒野を歩いている。
ひび割れた大地は灰色で、空も同じように色を無くして、頭上にのし掛かるように広がっている。
どこに行けばいいか分からない。どこに向かっているかも、自分が誰かも。
ただひたすらに、歩いている。

誰かに指差された方を目指している気もした。多分こっちを指差していた。
誰だったのか分からない、でも大人の男の人だった気がする。


ふと冷たい風を感じ、背後を見ると、上空で分厚い雲が雪を撒き散らしながら、自分の方にに向かってくるのが見えた。
怖くなって逃げようとするのに、靴は鉛を付けたように重く、足が持ち上がらない。もうへとへとだった。
それでも足を前に出そうとする。しかし冷気と共に冷たい物が降りかかるようになり、やがて辺りは吹雪になった。
強い風で粉のような雪に包まれ、あっという間に地面は真っ白になる。
寒くて、もう歩けない。
少年は雪原の中に膝をつき、その場にうずくまった。
その背は容赦なく吹き付ける雪で色を無くし、小さな白い塊のようになる。
ただ寒かった。
手足の先がひどく痛い。まだ温かさが残っているのは腹部だけ。そこに冷たくなった腕を抱え込み、なるべく体を小さく丸めた。

このまま凍えて、凍って死んでしまうのかもしれない。そう思った時だった。

「諦めないで」

頭上から声が聞こえ、熱の塊のような手が、背中の雪を払うのを感じた。その手は冷えきった体を抱え上げ、立たせてくれる。
顔を上げると、赤い髪をした綺麗な女の人が、目の前にしゃがんで、見つめてくるところだった。

「しっかりしなさい、男の子でしょ」

そう言いながら、その人は力強く両腕をさすり、手を握ってくれた。
それが温かくて、体が震える。まるでそこから全身に体温が戻ってくるようだった。
頭の後ろが痺れ、うっとりと緑の瞳を見つめる。
見たことのある瞳だった。
抱きしめられ、でもそれは一瞬で、すぐに離され背中を押された。

「もう平気ね。さぁ行って」

とっさに振り返って見ると、彼女はもういなかった。

「行くって、どこに?」

心細くなり、声を出した。でもあるのは雪だけ。
吹雪は止んで、空は真っ黒だった。
また一人。

そう思って振り向くと、積もった雪の中から小さな四角い物体が突き出している。
不思議に思って近づくと、そのいびつな四角が上下に動いた。

「やぁ、すまないけどここから出してくれないかな?埋まっちゃったんだ」
「しゃべった!」

驚いてよく見ると、四角には目のようなレンズが付いていて、下に体があるようだった。
それが見たくて素手で雪を掘り、中から本体を持ち上げる。
ロボット犬の頭みたいな胴体に、平たい何かが付いていて、反対側には穴が開いていた。その下には足もある。
自分より小さいけれども、抱えたら重い。

「おまえ、ロボット?」
「そうだよ。マークIIって呼んでくれ」
「マークII」
「この雪じゃ、さすがに移動は辛いね。どうだい?もっとあったかい所に行こう」
「あったかい所?」
「そう。目を瞑って、太陽を思い出して」

言われた通りに目を閉じ、青空にさんさんと輝く太陽を想像した。
すると寒さが遠のき、急に体がぽかぽかと火照りだした。
目を開けると、青空と、目の前には茶色い地面が広がっていて、埃っぽい風が、砂を巻き上げている。
今までと打って変わって、汗ばむ気温だ。

「ちょっと極端だけど、まぁいいかな。じゃあ行こうか。降ろしてくれる?」
「これ、おまえがやったの?」

掴んでいた体を下ろすと、マークIIは足を揃えて、小さなタイヤで軽快に走り出した。

「そうとも。実は僕は魔法使いのロボットなのさ!すごいだろ?」
「うん、すごい!」

少年は慌てて後を追う。置いていかれて、また一人になるのは嫌だった。
追い付くと小さな連れ合いは、速度を落として隣を走ってくれた。

「ほら見てくれよあの雲、熊みたい。あっちのは魚だ、熊が狙ってるのかも。魚のピンチだ!」

マークIIはロボットのくせに面白おかしく話をして、少年は途端に、歩くのが楽しくなった。

「はちみつがあればいいのに。熊はほんとにはちみつが好きなんだよ。知ってた?」

目の前の景色を、この小さなロボットが語って聞かせると、まるでサーカスのように不思議と驚きに満ちたものになる。
石ころがまだ大きな山だった頃の話や、空の色がなぜ青いのか。
少年が興味を持つと、景色は複雑に変化を見せるようになった。
草原になったり、川ができたり、夕焼けを眺めたり。

「行きたい場所は?」
「場所?」
「うんそう、楽しかった所とか。どこかあるだろ?」
「…移動遊園地」

少し恥ずかしかったけれど、相手はロボットだし、そう思って口にした瞬間、辺りが暗くなり、色とりどりのネオンに照らされた遊具が建ち並ぶ中に、少年は立っていた。
カラフルな門にメリーゴーランド、カートや巨大な振り子のような乗り物、様々なアトラクションは、まるでキラキラと夢の中のようだ。
お化け屋敷や射的、ゲームやくじ引きの店もある。

「へぇー、入場は無料なんだね」
「うん。だから見に来てた」

ワクワクしながら乗り物を眺める。いつも眺めてばかりだった。

「今日は遊んで行ったら?」
「お金ないよ」
「僕を誰だと思うんだい」

そう言うとマークIIは脇の穴からしゅるしゅると細長くくねった腕を出し、胴体を開けて中からお札を取り出した。
思いきり遊んでもお釣りがきそうな金額だった。

「さあどうぞ!ちょっとくらい寄り道したってバチは当たらないさ」

陽気に言われ、少年は瞳を輝かせてそれを受け取り、そして小さな友達を抱えた。
マークIIと乗れる乗り物には限りがあった。あまり激しい動きの物には、大きなおもちゃの持ち込みは嫌がられたからだ。
少年がロボットを抱いていると、まるで射的の景品を持って歩いているようだった。

「僕なら見てるから乗っておいでよ」
「うん」

少年は返事をしてもその気はないらしく、連れ合いとでも入れる場所を選び、二人は一緒に楽しんだ。いくつも建物を回って、気のすむまで遊んだ。
カートに乗ってサーキットを走り終えた後に、少年が、ふと湧いた疑問を口にした。

「マークII、おまえは誰が作ったの?」

すると乗っていた遊具は消え、気づくと石の上に腰かけて、隣にいる友達を見下ろしている。
また荒野が戻ってきた。

「僕のことが気になる?確かに全てには元がある。僕にも、君にもね。もう出発しなきゃ」
「また?」
「今のは一休みだよ。だろ?君には行くところがあるんだ」
「ここにいちゃだめ?」
「残念だけど、それはできない。さぁ行こう」

マークIIが走り出したので、少年も重い腰を上げるしかなかった。
どういうわけか、先に進みたくなくなっていた。

「そっちに行きたくない」
「でも戻れもしないんだ。行くしかないよ」

そう言われ背後を見ると、人がたくさん倒れている。
ぎょっとして、怖くなった。何があったのだろう。

「見ない方がいい」

マークIIの小さな手が腕に触れ、促されて再び歩き出す。

「みんなどうしたんだろ…」
「そのうちに分かるよ。これ以上あんな風にならないように、君は行かなきゃならないんだ」
「そうなの?」
「そうだよ」

少年は立ち止まって、改めて友達の三つのレンズの瞳を見つめた。

「この先に何があるの?」
「この先には、そうだな…ゴリアテが待ってる」
「ゴリアテ?」
「ペリシテ軍の巨人兵士だよ、3メートルはあろうかっていうね。ゴリアテはエラの谷で、イスラエル軍に一騎討ちの戦いを申し込んだ。でもその大きさに圧倒されて、誰も受けて立つ勇気がない」

マークIIは首と腕を伸ばして、その大きさをアピールした。でも元が小さいから、スケールはあまり伝わってこない。

「そこへ食料を届けに来たダビデっていう少年が、自分が戦うって王様に申し出た。王様は鎧と剣を与えたけど、重くて動けないから脱いじゃってね、武器はパチンコと拾った石ころだけ」
「…それで?」
「ゴリアテはすごい勢いで突進してくる。ダビデはじっと狙いを定めて待った」
「それで?」

まるで自分のことのように先が気になり、少年は身を乗り出すように屈んでマークIIを凝視する。

「小石は見事ゴリアテの額に命中して、奴は勢いよく倒れこんだ。こう前のめりにドドーン!ダビデは剣がなかったから、相手の剣で本人をやっつけたんだ」

分かっていたけれど、やっぱりダビデが勝ったのにホッとする。

「そいつが、この先にいるの?」
「そいつみたいなものがね」
「大きいってこと?」
「ああ、とても。でもダビデは恐れを克服して、ゴリアテに勝った。勇敢な少年だ、君みたいに」

そう言いながら彼は、自分のお腹からパチンコを出し、渡してくれた。
それを眺めていると、今度は頭上から声がした。

「ゴリアテはゴライアス、ダビデはデイビッドだね。君の名前の古い由来だよ」

見上げると、マークIIの声をした大人が見下ろしてきていた。

「やぁ」

茶色い髪で、くたびれた無精髭の顔に眼鏡をかけている。でもその奥の灰色の目は優しそうで、なぜだか懐かしい感じがした。見たら安心するような瞳だった。

「僕のこと思い出してくれたかい?でも君自信のことはまだみたいだね」

笑われ、マークIIを探してみるが、姿はもう見当たらない。

「君はその勇敢さで、やらなきゃならないことがある。だから行かないと」
「どこに?」
「エラの谷だろうね、この先だ。もうすぐだよ」

指差された先には、まだ荒れた大地と空しか見えない。
暫く歩みを進めて、側に誰もいなくて振り向くと、男の人は元いた場所に立ったままだった。

「マークIIはいないの?」
「そう、僕もここまでだ」
「…行っちゃうの?」
「行くのは君だよ、僕じゃなく。僕はいつでもここにいる」
「来ないの?」
「君が望めば、すぐ隣にいるから大丈夫」

引き返そうとしたら、強い風と砂煙で進めなくなった。
戻れない。
後退りしながら、砂で見えなくなる相手に向かって叫ぶ。

「ほんとう?」
「本当さ!目を開けたら見てごらん!大丈夫だから」
「ほんとに?」
「君は勇敢な男だ、だから大丈夫!」

大丈夫、そう言われて砂煙に背を向け、再び歩き出す。
また一人だ。

そう思ったけれど、声は耳に残っていて、隣には小さな友達が走っているようだった。手の中のパチンコを握りしめる。
足元に落ちていた小石を拾って、ポケットに入れた。これが武器だ。
大丈夫、自分に言い聞かせて、谷を目指して足を前に出す。

大丈夫、どんな巨人が待っていても。







目を開けると、ノーマッドの天井が見える。
脇に目をやると、オタコンが椅子に座って心配そうに覗き込んできていた。
本当に隣にいる。夢の続きのようだった。
エラの谷がどこか、ゴリアテが何者なのか、全てが分かったような、合点がいったような気になる。
いつでも、自分達は巨人に立ち向かう、ちっぽけな少年のようなものだった。そびえる影と圧倒的な力の差。
今回もそうだ。
しかしたとえ石ころしか持っていなくても、逃げ出すわけにはいかない。
行かなければ。

「どれくらい寝てた?」
「丸1日は…」

起き上がると目の前の男は、現実に打ちのめされ、望みを絶たれでもしたように、弱ってしょぼくれた顔をしている。
けれども自分の耳には、同じこの男の声が、ちゃんとまだ残っていた。
大丈夫。そう自分を励まし、奮い立たせる声。

谷に向かえば足元には、マークIIがいるだろう。あの小さな体で、どこまでも一緒に走ってくれる。
そして自分が望む限り、隣にいる相棒は、どんな人間より手厚い助けをくれると、分かっていた。

だから、大丈夫だ。まだ戦える。
たとえ巨人に踏み潰されようとも、恐れずに。


かつて聖書の時代、勇敢な少年が、そうしたように。










END

4のAct.1後、ブリーフィングまでの間の夢のお話。




 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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