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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 小説【もくじ・関連記事】 >  憧憬悋気ーショウケイリンキー [続]  

憧憬悋気-ショウケイリンキ-1:MGS小説。ゲーム2の後、雷電がサニー救出に携わるまでを個人的に!

 



マンハッタンの冬は厳しい。
氷点下の気温に凍てつく街路樹が枝を伸ばす空は、色を無くしたほんの薄い水灰色を、ビルの間から不機嫌そうに覗かせている。

通りの角に建つ、一軒の古めかしいコーヒーショップ。
ベルの軽い音を鳴らし、暖まった店内に一人の青年が入ってくると、ささやかながら店の客達が目を向けた。
ほとんど白髪に見える伸ばしぎみの銀髪に、整った目鼻立ちはやや中性的な印象を残していて、人目を引く容姿だった。
待ち合わせの旨を伝えると、店員に気持ちよく席まで案内される。
マフラーを取りながら窓際の椅子に座り、車の往来に目をやると、その向こうの歩道を二人、見慣れた男が歩いているのが見えた。注文を聞かれ、殆ど無意識にコーヒーを頼むと、彼、雷電は眩しそうに目を細め、二人の男をじっと見つめ続けた。
人生を変えた、ビッグ・シェル事件での出会いが、そこにあった。

VRの中でしか知らなかった伝説の英雄、ソリッド・スネークと、その相棒であるオタコンこと、ハル・エメリッヒ博士。
しかし彼らは、テロを起こした堕ちた英雄達として、一般には認識されている。
実際には、政治をも影から操るとされる組織、「愛好者達」に陥れられ、スネークは死を偽装し、世間からその存在を抹消するまでになっていた。
彼の本名は教えてもらっていない。自分のものは知られているのに不公平な気がするが、結局知っていてもコードネームで呼ばれているし、自分もそうするだろう。
あれから、一ヶ月近くが経とうとしている。

ローズと生活を共にするようになってからも、常に頭にこびりついて離れない問いがある。
己のすべき事とは、何か。
それがどうしても、彼女と子供をもうけて幸せに暮らす事に繋がらない。家庭というのが、自分には似つかわしくない物のように感じていた。
自らの持っている能力を使う場所がないという、フラストレーションもある。自分はやはり所詮、切り裂きジャックなのだろうか。

愛国者達の人間だった彼女が機関を逃れると、目立たないように隠れて暮らさなくてはならず、それは困難だった。
ローズは元々、そっと気遣って言いたいことを率直には言わない所がある。壊れ物を扱うように話されるのも、居たたまれない。
そうしたあらゆる要因が、少しずつお互いの距離を作り出していると、そう感じていた。

自分が死ぬと一蓮托生である、オルガの娘の事も、ずっと気になっていた。
もう誰にも連絡を取らないと、ローズと約束したにも関わらず、とうとう博士の教えてくれた連絡先に、メッセージを残してしまった。
公衆電話から、特定の奇妙な番号へ。
すぐに折り返し連絡が来た。スネークかと思って緊張したので、聞こえてきたのが博士の声で、少しホッとした。
もうすぐ、二人が目の前にやってくる。
人生を変えた、あの大きな激流を一緒に戦った、導いてくれた、英雄が。


白くなる息で眼鏡を曇らせ、後ろで跳ねた髪をマフラーの上で揺らしながら、オタコンは意気揚々と歩を進める。
それを付かず離れず追いかけながら、スネークは溜め息をついた。

「今日はビックリする人に会うよ」

そう言われて連れ出されたが、無闇に外をうろつくのは気乗りしなかった。
会う相手というのも、女性だったなら嬉しいが、オタコンの感じからいってそれはなさそうだ。変に身構えてもいなければ、浮かれた様子もない。こういう時は同性相手だと相場は決まっていた。

「時間は?平気かい?」
「少し遅れそうだな。あと二分」
「大変だ、急がなきゃ」

腕時計に目をやり、告げると、オタコンは信号を見つめ、待ちきれない様子で足踏みする。いかにも急いでいます、といった風情だ。
以前に比べたら、大分取る行動も落ち着いてきたが、年相応というにはまだ遠い。
背中で出がけに無造作に巻いたマフラーの端が、緩んで落ちそうになっている。
もうすぐ目的地のようだったが、気になってそれを直し、端を巻いた部分の中に潜り込ませた。


ガラスの向こう側、二人が横断歩道をこちらに向かってくる。
雷電は何となく、コーヒーに口もつけずに、カーテンに隠れるようにしてそれを見ていた。
街中で見る彼らの姿は、あの時とは感じが違う。
世をはばかる生活を送っているはずなのに、博士は楽しげに小走りに車道を渡り、スネークもそれを大股でのんびり追いかけている。
誰も、二人が世間を騒がせた、悪名高きテロリストだとは思うまい。
そんな様子を眺めていたら、最近あまり、ローズが自然に笑ったところを見ていない事に気付いた。
いつでも気遣わしげに微笑んでいるか、なるべく楽しそうに話しているか。それに応えて表面だけでも笑っていられたら、と思う。
それすらできない自分の大人気なさを思うと、気が沈んだ。



「やあ、雷電!元気だったかい?」

席に向かって軽く手を上げ、オタコンは視線の先にいる銀髪の青年に笑いかけた。
スネークは隣で目的の人物に少々驚きつつも、やや渋い顔になる。
彼の相棒は、知人も友人も十把一絡げに、まるで一見親しい間柄の人間のように扱う。それを見ていると、こうやって妙な人間とも親しくなって連れていかれる、なんて馬鹿な事が、この男に限っては起きるんじゃないだろうか、そんな事を思わずにはいられない。

「私服は初めてだね、こうやって見ると君ってハンサムだなぁ。彼女、ローズだっけ?とは上手くやってる?」

スネークの心中をよそに、オタコンは畳みかけるように話をしながら雷電の向かいの席に着く。首からマフラーを外し、白いコートを脱いで、当たり前のように連れに渡した。
それを受け取り椅子の背に引っかけながら、スネークも隣に座り、店員にコーヒーを二つ注文する。
上着を脱いだのはそれからだった。

目の前で起きた一連の出来事を、雷電は珍しい物のように見ていた。
どうと想像していた訳ではないが、あまりにも伝説の男が自然に使われているので驚いたのだ。

「あ、ああ、一応元気でやってる…」

オタコンに不思議そうな顔をされ、やっと何とか返事をする。
それを受けて相手はにっこり笑うと、隣の男に話しかけた。

「だって、よかったね。どうだい、ビックリした?」
「…まあな。だがコードネームを呼ぶなら、もう少しボリュームは下げた方がいい」
「ああ、そうかごめん雷電。でも本名を大声っていうのよりはましだと思うよ。ねぇ」

愛想よく笑いかけられ、どういうわけか何となくそれが、ローズにされたように勘に障った。
自然、スネークに対して眉をひそめてしまう。

「…話したのか?」
「いけなかったか」
「べ、別に悪かないが…俺はあんたの本名も教えてもらってない」

悪びれずに言われて、確かに悪い事ではないし、別に自然だとも思ったのに、出た声は恨めしい響きになった。

「そう言えばいつか教えるような事は言ったか」

スネークは懐かしむように軽く笑って雷電を見つめ返した。
その隣で博士が目を丸くして、正面と脇を交互に見ている。

「え、そうなの?」
「そうさ。自分のも意外と平凡だって」
「へぇ、言われてみるとそうかもね。でなんで教えてないんだい?君は有言実行の男だろ」
「単に機会を逸しただけだ」

片眉だけ上げて、微妙な顔つきになるスネークを見て、雷電は自らの振った話題に後悔を覚えた。
こんな風に文句をつけるつもりじゃなかった。そう思っても、眉間に寄っていく皺をどうする事もできない。
もっと違う話をしに来たはずなのに、こうして二人を前にしたら、自分が酷く欠陥品のような気持ちになって、言い訳のように攻撃的になっていた。
自分はローズと、こんな風なパートナーになれていない。
なれる自信がない。
コーヒーが運ばれ並べられる間、少しの沈黙がやってくる。
それを破ったのは、一番お喋りな眼鏡の男だ。

「で、今教えないのかい?一応待ってみたんだけど」
「……」

オタコンが背を反らして、距離を取ってスネークを眺めると、雷電もその顔をじっと見つめた。
ビッグ・シェルにいた時より、髪の色が暗く見え、瞳の色は違っている。
あの時は、明るめの茶色い髪に緑の瞳をしていたが、今日はどちらかというと髪はブルネットに近く、瞳は薄い水色だ。
ビルの間に見えた空の色に似ていた。
本当の容姿も知らなかった。ローズの時もそうだった。
そんな、悪いことばかりに意識が向く。近頃の自分はずっとそうだ。
脇と正面から遠慮のない視線を注がれ、スネークは居心地悪そうにコーヒーを口に運んだ。

「まぁその内、こんな公衆の面前でない場所でな」
「え、おいおい、待ったのに」

ガックリ肩を落とす博士を見て、雷電は自嘲ぎみに口の端を上げ、溜め息をついた。
確かに待ってしまった。けれども知ったから何だというんだろう。

「でもそうか、君らはどうも、二人でいると目立つみたいだしね。こういうプライベートな話は別の所でした方がいいよ。うん」

雷電の容姿からか、後からやってきた二人も客の興味を引いていた。スネークも見れば独特の雰囲気のある男で、二人が向かい合って座っていると、確かに目立つ。
そこへきて少々変わった動きをする、二人からはおよそ異次元の男が一緒にいるのが違和感となって、余計に視線を集めているのだが、当の本人はそれに全く気付いていない。

「一息ついたら部屋に行ってゆっくり話そう。いいだろ?」
「…別に構わんが」

スネークは渋々といった体で返事をする。

「君は?雷電。時間とか大丈夫かい?」
「…ああ。問題ない」
「じゃ、決まりだ」

話はすっかり博士を中心に回っている。口数が多いのもさることながら、話題をまとめ、次の話題を振りと、会議を回す能力も多少なりと持ち合わせているらしい。
そういえば、メタルギアの開発チーフという肩書きを、以前は持っていたはずだ。
思い返し、雷電は妙に納得した。現場で技術者を纏めるような事も、あったのかもしれない。

「何かお茶うけでも買って帰ろうか」
「おい、そんな呑気な外出なのか」

しかし流石に話が妙な方向に向かうと、隣の男も黙ってはいない。

「お客さんに何にも出さない気?」
「その客を買い物に付き合わせるのもどうなんだ」
「いいじゃないか、時間あるって言うんだし。ねぇ」
「…いや、まぁ」

返事に詰まる雷電を置いて、二人は目の前で議論を始めた。
勝手に話が進んでいくが、本当に客だと思われているんだろうか。

「そうだ、折角だから食事して行ったら?スネークのご飯、美味しいよ」
「ちょっと待て」

すっかり上機嫌な博士の横でスネークが目を剥き、雷電は思わず、それをまじまじと見つめてしまう。
伝説の男も、慌てる事があるらしい。動揺した所なんて想像もつかなかっただけに、そんな当たり前の事に、また驚いた。

「あんた、食事も作るのか?」
「言っておくが食事と言う程のもんじゃない。ある物で食える物を作るだけだ」
「でも作ってるんだな」
「……」

ばつの悪そうな顔で眉をしかめるのを見たら、少しだけ気持ちが浮上した。
自分にも相手を言葉に詰まらせる事ができたのが、嘘みたいで気分がよかった。

「是非いただくよ。どんなディナーか楽しみだ」
「だからディナーなんて代物じゃ…」

言いかけ、スネークは何かに気付いたように改めて雷電に目をやった。どことなく、憐れみを含んだ視線だ。

「そういえばお前、彼女の手料理っていうのは…」
「家じゃ毎日出てくる。きっとあんたの謙遜なんか、吹っ飛ぶような味だから安心してくれ。なんだってご馳走だ」
「…雷電、君、結構苦労してるんだね」

博士にまで、いつか聞いたような言葉をかけられ、気の毒そうに見つめられる。
食事の時間に気が重いと、やはり生活は辛かった。ローズは頑張ってくれているが、彼女の美味しいという基準は、一般から大分ずれているらしい。

「よし分かった。今日くらいは何か美味いものを食っていけ」
「お、やる気だ。やる気になったよ、やったね!今日はご馳走かも」

ひょんな事から歓迎ムードになった目の前の二人を、雷電は微かに笑い、見つめた。








つづく


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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