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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  ブリッジ -地上のカササギ-  

ブリッジ~地上のカササギ~:MGS小説、七夕のお話。(追記に落ちがちょっとだけ)

 


こぼれ落ちそうな満点の星空の下、地面は静かに紫色に浮かび上がって、主役を上空の光に譲っている。
どこまでも続く荒野。遠くの山は闇に姿を隠し、延々と続く道だけが、自分達の周囲に存在していた。
昼間ならば、そびえる崖の中腹には石仏が見えたかもしれない。
しかし今、頭上一面に広がる広大な宇宙のパノラマに、この世に敵う景色などない気がする。

「すごいね、天の川。白っぽく見える」
「ああ。こんな所でこんな立派なものが拝めるとはな」

オタコンが明かりを消して夜空を見上げるので、地面に腰を下ろしているスネークも、つられて天の川を眺める。
こうして景色や何かにじっくり目をやるようになったのは、この相棒と行動するようになってからだ。
世界はこんなに色々なもので溢れていたのかと、気付かされてばかりいる。

「天の川は言ってみれば銀河の中心だよ。あそこには巨大なブラックホールがあってね、その中には“アインシュタイン-ローゼンの橋”があるんだ」
「橋があるのか?」
「そう、理論上絶対に渡れない橋がね」
「ほう」

スネークが何やら興味深そうに空を見ているので、オタコンはおかしくなって、ポットを手に取り、側に寄っていった。

「橋っていうか、どっちかっていうとトンネルだけど」
「トンネル?」
「そう、その橋はね、一般的にはワームホールって呼ばれてるんだ」
「ああ、それじゃ渡れないはずだな」

さすがにこれは知ってたか、と笑いかけると、上を向いていた相手が眉をしかめる。

「橋を想像しちゃっただろ」
「勿論そうしたが」

居直ってそう言うスネークに、オタコンはポットを開け、蓋に温かいコーヒーを注いで渡した。
昼間は暑いくらいの気温だったのに、夜になったらやたら涼しい。

「実は通過可能なワームホールを考えるのは、研究上の遊びだけど市民権も得てるんだよ」
「想像の翼ならどこにでも行ける」
「そう言うけど、ちゃんとアインシュタインの方程式を解けるかやってるんだから。まあ不安定解だってのも分かってるけど」
「不安定解?」
「そう。通れるワームホールが存在するとして、そいつは1回通るとブラックホールに変化しちゃうんだ」

自分も一緒に座り込み、ワームホールの作りや変化する理由を延々語って聞かせるオタコンの隣で、スネークはその内容を、右から左へ聞き流していた。
分かった体で一応相槌だけは打ちながら、コーヒーを口に運ぶ。
香ばしい香りの熱い液体が喉を通り、体の内側がじんわり温もった。

「要するに使い捨てか」
「そう、自然なままではね。でも通過の度に人工的な補正を加えられれば、行ったり来たりも可能になる」
「また夢物語だな」
「ワープやタイムトラベルなんて、できたらすごいよね」

熱心な様子で話しながら夜空を見上げる隣の相棒に、スネークは羨ましいような、不憫なような、奇妙な気持ちを抱いた。
もしそんな研究が進んだとして、それは宇宙開発やメタルギアと変わらない。
大きな驚異と力には、軍事的政治的利用のために、熾烈な情報戦と極秘利の非人道的実験が待っているだろう。
ただ夢として想像するだけで、そんな風に考えてしまう自分が哀しい存在なのか、夢として希望だけに胸膨らませることのできる、この男が平和すぎるのか。
多分どちらもそうなのだろう。
だからこうしていると、その夢だとか現実にバランスが取れる。

「七夕って知ってるかい?スネーク」
「七夕?」

唐突にオタコンが話題を変えながら笑顔を向けてきて、スネークは今の考えを悟られたような気になり、決まり悪そうに視線を空に移した。
そんな相手の様子には全く気付かないように、オタコンは楽しげに話を続ける。

「日本と台湾と中国、韓国、あとベトナムだったかな?の節句だよ。七月七日」
「まさしく良い事がありそうな日付けだな」
「そうだね。本来は旧暦で祝われてたそうだから…場所によっては日にちが違うけど」

説明しながらオタコンは、スネークの手からポットの蓋をそっと奪うと、熱いコーヒーを注ぎ足し、少し吹いてから口をつける。

「七夕はね、年に一度、天の川を渡って、織姫が彦星に逢いに行ける日なんだ」
「なんだ、ロマンスの伝説か」

スネークは手持ちぶさたになった手を組み、隣でコーヒーをすする相手に目をやった。
先程まで宇宙科学か何かの話でもしていたはずだが、今度は非科学的な話になったらしい。
伝説の英雄と呼ばれた事もある男にとっては、伝説とは科学的根拠のないものだ。

「そうそう。あっちの東にある、こと座の一等星ベガが織姫で、西側のわし座の一等星アルタイルが彦星だよ」
「年に一度か、少ない会瀬だな」

空を指差すオタコンの指先を覗き込み、先にある星を見ながら、思った事をそのまま述べる。
空には見た事もないような明るい星の川と、それを跨いでくっきりと輝く2つの光が視認できた。

「これは中国で生まれた伝説なんだ。天帝がね、娘の織姫が働き者で男っ気がないのをかわいそうに思って、天の川の西にいる、これまた働き者の彦星と結婚させたんだ」
「本人の意思はいいのか」
「あー、昔の話だからねぇ」

ごく当たり前のように聞かれ、オタコンは苦笑しながら続ける。

「でも二人は相性バッチリだった。仕事そっちのけでラブラブになっちゃったんだね」
「成る程、織姫ってのはさぞかし美人だったんだな」

茶々を入れてくるスネークに目をやると、溜め息をつきながら、頭を傾けて頭上を見上げている。
手には煙草が出てきていたので、自分の持っているコーヒーをもう一度押し付けた。

「そうとも、そりゃもうエキゾチックな美人だ。はいはい想像して」

またポットの蓋を渡され、煙草と蓋とを両手に持ちながら、スネークは何となく東洋の色っぽい女性を頭に描いてみる。
黒髪、細い手足、細い腰、形のいいお尻。胸はもっと大きくてもいいのだが。

「想像したかい?」
「…アジアの美人は何で皆スレンダーなんだろうな」
「スネーク…、ちゃんと服は着せてくれよ。そういう話じゃないんだから」
「ああ、そうか」

呆れたように言われて、直ちに修正を加えるが、中国の服がよく分からないので、想像は朝鮮の民族衣装であるチマチョゴリらしき姿になる。

「…アジアの服は何で全身布だらけなんだろうな」

脳内イメージへの感想で、一応服が着せられたと認識したオタコンは、話の続きに戻る。

「えーと、どこまでいったっけ?」
「結婚してラブラブまでだ」
「ああ、そうだったね。若い二人は結婚生活に夢中で、毎日仕事もしないではしゃぎ回ってばっかりになっちゃったんだ」
「新婚じゃあな」
「まぁみんなそう思うよ、うん。だから天帝も新婚さんのうちは目を瞑ってた。でもいつまでたっても二人はそんな感じで、再三言っても聞こうとしない」
「ある意味羨ましくもあるが」

何だかスネークは男のロマンの方に想いを馳せているようだ。

「分からなくもないけど、仕事をしてないってのが問題だ。織姫は機織りだからまだいいよ、でも彦星の仕事は牛飼いだった。考えてみてくれよ、牛舎で放っとかれる牛」

途端に幸せそうな若夫婦の向こうに悲惨な光景が浮かび上がる。
今なら動物愛護団体が黙ってはいまい。

「…悲劇だな」
「だろ?それで怒った天帝が、二人を元の対岸に引き離したけど、別れたから仕事ができるかっていったら、まあ無理だよ、お互い恋しくて。織姫は泣き暮らしてた」
「人生ままならん」

そう小さく頷く相手に、オタコンも一緒に頷く。

「それで天帝は、真面目に仕事をしてたら、年に一回会わせてやるって事にしたんだね。二人は一年に一度、七夕に逢えるのを励みに、それぞれ仕事を頑張るようになりましたとさ。めでたし」
「めでたいか?」
「まあ仕事してれば会えるんだし、多分神様の世界とか半永久的に生きてるわけだろ、一年とか、結構あっという間なんじゃないのかな」
「そういうもんか」

すっかり真面目に話を聞いていたスネークは、少し納得いかなそうな様子で思い出したようにコーヒーを飲んでいる。
ロマンスの伝説なんてからかうように言っていたわりには、楽しんでもらえたようだ。

「今日はいい天気だから、きっと今ごろ二人は幸せな再会の最中だろうね」

にこにこと付け加えると、更に納得のいかない顔をされた。

「天気が関係あるのか?空の向こうの話で」

オタコンもこれには不満げな声を出す。

「それを言ったら天の川が川な時点で、この話はおしまいだ」
「…ああ」
「雨が降ったら天の川の水かさが増して、織姫は向こう岸に渡れなくなっちゃうんだよ」
「まだ続きがあるのか」

少々うんざりされても、構わず話を続ける。この先が、実はオタコンの一番好きな部分だった。

「あるとも。せっかく頑張って七夕を迎えても、天気が悪いと二人は岸辺で涙を流すしかない状態だ。切ないね」
「過保護な父親はどうした」
「さあ、忙しいとか?でも大丈夫、そんな二人を見かねて、何処からともなくカササギの群れが飛んできて、翼を広げて橋になってくれるんだ。雨が降るとね」
「…また随分と都合のいい話だな」

スネークが顔をしかめるのを見て、オタコンは、困ったように眉を下げて笑った。確かに都合のいい話だと思う部分はある。
だとしても、そのエピソードが好きで、この話を覚えていたのだ。

「そうだね。でも世の中って、意外とそんな風にできてると思わないかい?」

隣で相棒が、更に渋い顔になって見つめてくる。きっとおめでたい奴だと思われたんだろう。
でもいいかな、という気がした。

「僕はね、そう思うんだ。彼女たちが本当に一途に望んだから、助けが現れたんだよ」

川に皆で身を渡し、織姫を助けてあげるカササギたち。
楽な仕事じゃないと思う、お礼やご褒美があるわけでもない。
でも真剣に悲しむ二人の様子を見かねたから、身を挺して助けてあげることにしたのだ。

マグパイ(カササギ)といったらすごくうるさい鳥で、光り物好きでお調子者で、言ってみたら三枚目のキャラクターだ。
欧米ではそれが普通だから、この話を知った時には以外だった。
でも皆には人気がなくても、うるさく文句を言いながらも、誰かのためには無償の厚意を示せるようなところがあるんだと、そう思ったらカササギが好きになった。
カチカチとやかましい鳴き声も嫌いじゃなくなった。

「助けがな…」
「そういう事ってないかい?」

そう問われ、スネークは返答に困る。
考えてみたら、これまで窮地で生き残ってこれたのは、自分一人の力だけではない。
いつでも助けがあった。
一途に望んだからかどうかは分からない、しかし確かに、まるで天の助けかと思うような瞬間が、幾度ともなくあったのも事実だ。
そういう事なんだろうか。

「お前はどうなんだ、あるのか?」
「もちろんあるとも。だから僕もカササギになろうって思ったんだ」
「カササギに?」

聞こうとするとオタコンは、立ち上がって車の方に戻って行ってしまう。
置いていかれたポットに蓋を閉めると、スネークも後を追った。

「ところで今この瞬間に、カササギ的な事をしてみようとか思わない?」

近付くと声をかけられ、なんの事かと思っていると、明るい光がこちらを向く。

「おい、眩しいぞ」
「ごめんごめん、はいこれ」

手に持った懐中電灯を渡され、車の開いたボンネットを照らすと、オタコンが位置を示してくる。

「いかれた部分は見つかったんだな」
「うん。直すのこれからだけど」
「日が昇る前にアフガン入りできるのか?」
「多分ね。君も手伝ってくれるし」

どうやら自分はカササギ決定のようだ。
パキスタンで調達した車がエンストを起こし、足止めを食らっている最中だった。

「それは構わんが。そのカササギになるって話は」

尋ねてくるスネークを一度見つめると、オタコンは小さく笑って作業にかかる。

「んー、織姫に怒られそうだからよしとく」
「何?」

星明かりで明るく浮かび上がる夜空の下、暗闇に一つの星のように、光が灯っていた。








END

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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