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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  死のことわり[続]  

死のことわり:2のタンカー後、MGS小説もどき。

 




一度だけ、言い争った事がある。
死について。


それは身近にあったもののはずだった。
戦場で隣り合ってきた親しみのあるもの。
シャドーモセスで殺人ウィルス、フォックスダイに感染してからは、いつ発症して死ぬかもしれないという、そんな懸念もすぐそこにあった。
だがどういう訳か、あの頃、自分はそれについて、あまり悲観していなかったのも事実だ。
不安はあったが、自暴自棄になったりはしなかった。
フォックスダイを体内に注入された、ナオミを信じていたのかもしれない。どこかで。



あれは、タンカー事件でオセロットに、正確には奴に宿ったらしい双子の兄弟、リキッドの精神に老化を知らされてから、しばらく後の事だった。
軍に保管されていたリキッドの遺体を、自分の死体として川に沈め、世間的には死人となった。
あの頃自分は、実際に肉体の衰えを感じ始めたのもあり、精神的に参っていた。

死ぬなら、戦って死ぬ方がいい。
そう思うのは、恐らく死にたくないからだろう。今なら分かる。
戦いになら勝てる。勝てる可能性が残されている。
もし負けて、命を落とす羽目になっても、その命を何かに使って、生きた証にしたいのだ。
死にたくないという思いのみで生きていた頃とは違い、いわゆる未練と言われるようなものも、多少はあった。
一緒に暮らす男を独りにする事も、気になっていた。

自分の死が痛手になる人間がいるなんて、本来ならば喜ぶべきことだろう。
しかしそれは、生き長らえる事のできない己への苛立ちに変わった。

いつの頃からか、自分は滅多な相手には殺されない。そう自負していた。
最強の呼び名に謳われたビッグボスを破り、数々の敵と死線を渡り合ってきた。
その自分が、自らの肉体にだけは勝てない。
その事実に、腹の底が焼けるような、憤りを感じた。

一人ならば、ただ黙って耐えていればいい、死ぬまで。
しかし二人では、それは簡単にいかなかった。
なぜ自分が死ぬのか、DNAによって識別された殺人ウィルスにすら殺されず、今まで生き延びたというのに、なぜ。
そう、問いかけずにいられない気持ちになるのだ。無駄だと分かっていても。
誰かといる、それだけで。
相手が気を許した相棒では、尚更だった。
どうして、人間というやつは、自分以外の人間といる瞬間、こんなにも弱くなってしまうのだろう。
日に何度も、耐え難い衝動に駆られた。
何もかも、無茶苦茶にしてしまうか、消えて無くなるかしたい。
声をかけられるのもごめんだ。飯を食うのも、息をするのも。

いっそ相棒を殺してしまえば、煩わされずに野垂れ死ねる。どこでも好きな場所で、誰にも知られず。
そんな風に考えたことも、一度や二度ではない。
か弱い男だ、その気になれば、片手で縊り殺すことができるはずだった。
きっと安心する。
もう弱い自分にうなされずに済んで、頼る気持ちも、すがる気持ちも失せるだろう。
必要な他人がいなければ、一人だった頃のように、誰よりも強くいられる。
自分の面倒だけ見て、自分の始末だけつけて、去ればいい。


ある晩気が付くと、殺したいと思っていた相手が苦しそうに噎せ込んでいる。
すぐに気がついた。
意識の朦朧としている間、いつものように、自己防衛で手を出したのだ。しかし明らかに、相手は一線を越えたかという苦しみようだった。
喉を押さえ、うずくまり、吐きそうに咳をしながら涙を浮かべている。
妄想だけでは飽きたらず、体が実行に移したのだ。一人になろうと、本当に、一人になろうと。
悩みは最高のイメージトレーニングになる。夢や想像で何度も殺していれば、現実にはもっと簡単に殺せてしまう。それが、訓練だ。
いつ殺してもおかしくないと分かると、もう、手の届く場所では眠れない。

恐怖だ。
生まれて初めて、はっきりと恐怖を感じていると認識した。得体の知れない何かではなく、これは怖いのだと。
殺す事に特別な何かを感じていたのは、若い頃だけのことだ。久しくなかった感情に、戸惑いを感じた。
だが明らかに、殺す事が怖かった。

恐怖から抜け出すには、その元凶をどうにかするしか、遠ざけるしかない。
それで、何度か部屋を出た。
行き先も告げずに出掛け、そのまま帰らない。
しかしその度、相棒に居場所を見付け出された。
今までの任務の成功に、相棒の役割は大きかったようだと、今更ながらに実感せざるを得なかった。

「何で追ってくる」
「君が逃げるからかな。君のスニーキング能力より、僕の追跡能力の方が上かもね」

そうして発見された場所でしばらく過ごし、また逃げる。こんな事を数度に渡り、繰り返した。

「君こそ、何で逃げるのか聞かせてくれ」
「お前を殺すかもしれんからな」
「まさか、そんな事にはならないよ。大丈夫、落ち着いたらまた、元通りだ」

全く信じられない事だが、奴は本気でそう思っているようだった。

「大丈夫だから」

事あるごとにそう言っては、笑っていた。
そうされるたび、息の根を止めてやりたくなる。理性を総動員して密かに耐えた。
憎んでいたかもしれない。
恐らくそうだった。依存していたのだ、多分。
救えもしないのに手を差し伸べるなと、そう思っていた。
その命を代わりに寄越せる訳でもないのに、なぜ大丈夫などと言える?お前が。

そんな風に思うのは、相手に多くを求めているからだ。
明らかに、自分には奴が必要だった。
だからどうにかしなくてはならなかった。
これっぽっちも大丈夫じゃないと理解させるか、でなければこれ以上、一緒にいる訳にはいかない。

「俺は、お前より先に死ぬ」
「それは分からないよ。明日交通事故で、僕の方が死ぬかも」
「お前が車に轢かれなければ、俺の方が先に死ぬ。これは事実だ」

初めてまともに、先の話をしようとした。先の事は分からない、どうにかなる、ではない、必ず来る別れの話だ。
相手は取り繕うようにして笑っていた。
それで気がついた。『大丈夫』は、呪文のようなものだ。
そう呟いて、勇気を出すまじないのようなものだと。

「認めたくないならそれでもいいが、ガン宣告されたようなもんだ。そんなに長くは生きられないだろう」
「余命半年って訳でもないのに、大袈裟だな。そんなに深刻?」
「半年や1年後にくるのだけが死別じゃあるまい。分からないふりをするのはよせ」

死からは逃れられない。人間は誰もそうだが、それをリアルに肌に感じている者は、実際には少ない。
目の前の男もそうだ。

「…僕は認めないからね、君はこんなに元気で、体だって健康だ。そういうのはおかしくなってから言ったらどうだい?」
「体がおかしくなれば納得か。よく見ろ、今の現実を」
「僕が何かから目を逸らしてるとでも言うのかよ」
「しいて挙げるなら、全てだな」

わざと貶すように言うと、相手は傷つき、憤ったような顔になった。
当然だ。
実際にはこの男はよくやっている。リキッドの遺体を沈めようと立案し、タンカーで嵌められた何者かの特定に精を出し、メタルギアの情報を追い、十分に役割を果たしていると言っていい。
しかしその殆どを、何のためにやっているかが問題だった。

「お前が見誤っているのは、そもそも俺の価値だ。タンカーでテロリスト扱いされて、俺はもう死人だ」

死人になったのすら、生きるためだ。何もかもが、本来の使命から逸脱している。
もうNGO登録までしたフィランソロピーも、まともに動かない状態だった。
ただ、生きる為だけに生き伸びた。何のために生き長らえているのかも曖昧だというのに。

「君は、君にはまだやることがある。できることがあるんだよ。今はまだ、事の全容を見失ってるだけだ」
「それが買い被りだと言うんだ。オタコン、お前も薄々は、そう思ってるんじゃないのか」
「それどういう意味」

声と空気から怒りを感じる。
もうやめて欲しい。期待されても、これ以上何も出てこないだろう、自分からは。

「俺は、お前が思ってるような、英雄じゃない。世界も変えられない、誰も救えない、お前のことも」
「バカにしないでくれ!」

テーブルを叩く音。珍しい事だ、この男が物に乱暴に当たるのは。
よほど腹に据えかねたのだろう。歯を食い縛り、肩を震わせている。

「誰が君に救って欲しいなんて言ったよ!君が誰かを助けるのも世界を変えるのも勝手だけど、僕はそんな事のために君を助けてる訳じゃない!」
「違ったか」
「違う!」

声を張り上げて否定するということは、ただ違うのではなさそうだ。
それはそうだろう。自分は相棒にとって、使命を果たす道具だったはずだった。
国の剣をやめ、代わりにこの男の鞘に、収まったはずだった。

「確かに、君がいれば色々な事が実現できるって思ってたよ。君はそれだけの人物だし、思うなって方が無理だ。でも…」

視線の先で奴は、うつ向いて息を吐き、肩を下げた。何かを諦めたように見える。

「でも、こうやって一緒にやってきて、もちろん同じ目標のために協力してた訳だけど、でもそれだけじゃないだろ?僕達はさ、僕達、親友じゃないか…」

足元を見詰めて項垂れる様子を見て、方法を間違ったと気が付いた。これでは駄目だ。

「なんか信頼とか、友情とかさ、あるよね…?ないかな、僕だけかい?」

床に向かって必死に訴えられ、なぜ自分は、今この目の前の頭を殴って、そうでなければ蹴るんでも、絞め落とすんでもいい、とにかく黙らせて、そのまま殺してしまわないのだろうと考えた。
そう、いつでも殺せた。
煩わしかった。

なぜ煩わしかったのだろう。悲しませるからだろうか。
なぜ殺せなかったのだろう。死なせたくないからだろうか。

いつでも許せないのは自分だった。
今でもそうだ。
この善良な男は、何一つ悪くない。
何一つ。

「そうだな。だから考えろ。考えてくれ、俺が死ぬ事について」
「………」
「認めてくれ」

そして、沈黙がやってきた。










つづく



 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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