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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  怪物の美しき愛情-ハロウィンナイト-  

怪物の美しき愛情~ハロウィンナイト~:MGS小説。初めてのハロウィンで仮装、のコンビ。

 



「オタコン、行くんだか行かないんだかはっきりしろ」

アパートの一室に忌々しげな声を響かせ、スネークは入り口のドアの前で、いつもより一層黒っぽく染めた髪を耳の上に撫で付けた。
襟を倒した長いマントが厚みのある体を覆っていて、その内側に夜会服を纏っている姿は、安っぽいドアを背景にしていたとしても、実に絵になっている。
よく見れば唇の両脇からは牙が見えていて、今日がハロウィンであるのを知っていたなら、その装いがドラキュラ伯爵を模した物だと、誰もがすぐに気付くだろう。

バスルームから顔を覗かせて、そんな伯爵の見た目に満足気な笑みを送ったオタコンは、もう一度頭を引っ込めて、残りの支度に取りかかった。

「あと顔につぎはぎを付けちゃうから待ってくれよ。すぐだから」
「お前のすぐはあれか、カップ麺ができて食い終わってコーヒーが淹れられるくらいって事か」

ドアの前に立ってから、優にそれくらいは経っていると呆れ顔のスネークは、痺れを切らして相手の引っ込んだ先に向かった。
中では相棒が、眼鏡がないからだろう、鏡に顔をくっつけるようにして、額に大きめの縫い傷を貼り付けている。
あまり髭を剃っている姿も見ることがないので、物珍しい気持ちになってそれを眺めると、鏡越しに目を合わせたオタコンが、眉を持ち上げ振り返った。

「丁度いいや伯爵、あとちょっと色付けてくれるかい?」
「縫い目にか?血でも流すのか」
「そんなにスプラッタにはしなくていいからさ。元々死体だし」
「ゾンビにしてはまともだ」

額と頬と、口から顎にかけて縫い目の貼り付けられた部分に、チークらしきもので多少色をのせると、柔らかそうな質感でできた縫い目が馴染み、白い顔の中で主張して、作り物とはいえ痛々しい見た目になった。
そんな事をしなくても、唇の縫い目には赤く色がついていて、ふと見ただけでは切れて肉が浮いたように見えないこともない。
そんな、いかにもホラーな見た目ではあるが、その服装は古めかしい立ち襟のコートかローブといった具合で、スネークには何の仮装だか分からなかった。

「ゾンビじゃなくて、フランケンシュタインの怪物だよ。うんいいかな、ありがと」
「…いや、フランケンシュタインってのはもっとこう」
「そうそう、四角い頭で、いかつくて、首にボルトが入っててね。有名だよね、ボリス・カーロフ版。僕も初めそっちにしようと思ってたんだけど」
「フランケンシュタインに、何とか版だのかんとか版だのがあるとは初耳だ」

鏡を見てご満悦そうに玄関に向かう怪物を追いながら、スネークは意外そうに呟く。
オタコンは少し得意げともとれる様子で振り返ると、切れた唇で笑った。まるで見た目に似合わない、いつもの笑顔だ。

「知らないかい?フランケンシュタインはね、元はメアリー・シェリーの小説で、最初のSF小説って言われてるんだよ。1931年の映画版で、君もよく知ってるあの姿の怪物が有名になって、皆あれがフランケンだって勘違いしちゃうようになったんだ」
「違うのか」
「そうさ。あの人造人間には名前がなくて、本当はあいつを作ったのが、ヴィクター・フランケンシュタインって名前の学生だったんだよ。映画だと1994年版のが、内容を結構忠実に再現してるんだ。まぁ、最後の方で全く違う展開にもなるんだけど」
「成る程、見るならそれも良いかもな」

いつものように無駄に細かい説明が始まったので、スネークは早くパレードに向かおうと、オタコンの背後から手を伸ばして、部屋のドアを開けた。

「そうだね。ラブシーンが異様に濃厚だったりして賛否両論あったみたいだから、君には向いてるかも」
「そりゃどういう意味だ」
「まんまさ。興味湧いたろ?」
「……」

納得のいかない面持ちで外に出ると、先に出ていたオタコンが、何かに気付いたように中に戻って行った。

「おい、まだなのか」
「ちょっと忘れもの!」

仕方なく開けたドアに寄りかかっていると、彼はすぐにバタバタと戻ってきた。
見た目に何かを持ってきた様子はなく、どういう訳かと首を傾げてみせると、つぎはぎで顔色の悪い怪物は、長いコートの袖からそっと一輪の白い花を覗かせた。

「原作の怪物はね、フランス語が堪能で、ゲーテの『若きウェルテルの悩み』とか、ミルトンの『失楽園』を愛読するような知的なやつだった。気持ちも優しかったんだよ」

オタコンは平素の少しくたびれたような顔で白い造花を眺め、それから小さく笑った。
まるで怪物が本当にそんな人物だったように思え、スネークはその人造人間に興味が湧いてきた。
いつもそうだ。3日もしたら忘れるような話でも、この男がすると、結局最後には熱心に聞き入る羽目になる。
くだらない話も面白くない訳ではない気になるから不思議だった。

二人でアパートの階段を降りながら、説明に耳を傾けると、怪物はその醜さから人に攻撃され、逃げ込んだ小屋の中で、隣接した田舎家の一家の様子を、憧れの眼差しで眺めていたという。
そこへ来た外国娘がフランス語を教わる様子で言葉を覚え、拾った鞄から本を見つけて読み、上品さと穏和さを愛したが、池に映った姿を見て、自分のあまりの醜さに絶望した。
一家に受け入れられたいと切望し、けれどもとても姿を見せることはできない。

「言葉が分かるようになるとね、怪物は自分の持っていた紙束が日記だったって分かった。自分が死体を集めて作られて、しかも作った本人すら、胸がむかつくような酷い生き物で後悔したって」
「…ああ、作る奴らっていうのはそういうもんだな」

自分の出生にも微妙に重なる部分を見つけ、スネークは口に苦いものが広がるのを感じた。
隣で相棒は、それに気付いたようだった。それでも口を開く。

「彼は自分の生みの親を恨んだ。でも心は同じなんだって、分かってほしくて堪らなくなった。憧れの一家にね。愛してほしかった。だからある時、一家に告白するために訪ねて行った」
「で、失敗したんだな」
「うん…。もう世界には一人も、自分の味方はいない。彼は復讐に燃えてヴィクターのところに行ってね、でも頼むんだ。自分を受け入れてくれる、同じ化け物の女性を作ってほしいって」
「…そいつは作ってやったのか」
「ううん。一度は了承するけど、もし子供ができたらって思ったら、作りかけた女性を壊しちゃった」
「おい、そりゃ復讐もするだろう。そもそも命を作ろうなんてのが間違いの始まりだ」

そういう思い上がりの結果が、歴史の汚点と言わしめる自分の存在にも繋がっている、そう思うと腹立たしくなった。
フランケンシュタインとは、よくある怪物もののホラーだとばかり思っていたが、随分と悲哀に満ちたストーリーだったものだ。

「でも、怪物は醜かったけど、ヴィクターは理想的な人間を作るつもりだったんだ。見た目だって美しく選んだはずだった。死体の中からだったけど」
「何だ、今度は人でなしの作り主に感情移入か?」

意外に感じて立ち止まり、一歩先を降りた相棒を見ると、一瞬振り返った顔が、また進む先を見つめて俯く。

「フランケンシュタイン・コンプレックスっていうのがあってね、創造主に成り代わって、人造人間やロボットを作りたいっていう憧れと、その作った被造物に滅ぼされるかもっていう恐れを指してる。アイザック・アシモフが名付けたんだよ」
「SF作家の?」
「そう。この恐れが、『ロボット工学三原則』の元になってるんだ。自分達より優れたロボットっていう種に、滅ぼされてしまうんじゃないかって」

今度はお得意のロボットの話か、と思い、スネークは溜め息を付いた。いつもの事とはいえ、話があちこちに飛ぶ。
それでいて本人は一つの話題を続けているつもりなのだから、テーマに付いていくのも一苦労だ。

「僕だって、自分の作ったロボットが、もしかして僕と同じように感じて、愛情を示してくれたら…とか、全く思わない訳じゃない」
「まぁ、お前の作るもんは愛嬌がある方なんじゃないか、多分」

たまにパソコン内で設計したものを3D変換した映像などを見ていると、確かに可愛げがあるとは思えた。

「うん、だからね、僕には気持ちが分からないこともないし、それに、否定してほしくもないんだよ。…その、君には」

そこでやっと自分の方を向いたオタコンを見て、スネークはその言わんとしている内容を理解した。
いつも眼鏡に隠れている瞳は、よく見えないからだろう、普段より険しく向けられてくる。
どこか必死といってもいい。

「君を生み出したのが、もしも、フランケンシュタインの『純然たる機械的工程として完璧にコントロールされた出産』と同じものだったとしてもだ、でも君は、その科学の結晶の素晴らしさの賜物なんだよ」

オタコンは、どうやらこの命を、否定的に受け取ってほしくないようだった。
思い返せば今までにも、自分がその事実を皮肉のネタにする度、何ともいえない表情をしていた気もする。
もしかしたら、科学そのものを否定しているように取られていたんだろうか。
別にそんなつもりはないし、自分の認識では、そのフランケンシュタインの怪物とやらとこの命だって、そう大して変わらない。
それどころか人間らしい愛情に飢えた怪物の方が、よほど出来のいい被造物だという気すらする。

「どちらかというと、俺が怪物をやるべきだったんじゃないか。まさに打って付けだ」

何となく可笑しい気持ちになってそう言ってしまうと、眼下の男は、そのつぎはぎの顔に落胆の色をうかがわせた。

「スネーク、君のどこができそこないだって言うんだ。君を一目見て、叫んで逃げたり石つぶてを投げる人がいたかい?」

オタコンは、狭い階段の数段下を正面に移動し、自分を捉え、見上げてくる。

「君に手を差し伸べた人がいなかったとでも言うつもりかい?ねぇ!しっかりしてくれよ!」
「わめくな、アパートの奴にどやされるぞ」

時々こうして、オタコンは感情的になった。何と言ったらいいのか、何と言えば相手が満足なのか分からない。
こんなところだけは、メリルとこの男はよく似ている。

「君は君の不幸に気付く前には、どんな風に生きていたか考えてみてくれよ。本当はその頃と、何も変わっちゃいないんだ、本当は」

抑えられた声は、何かに堪えているように、余計に憤って耳に届いた。

「…ああ、そうか」

そうかもしれない。以前だって死にたくなくて必死で生きた。
本当は自分がどんなものか、知る前も知った後も、現実は何も変わらなかった。怪物だってそうだ。
ただ気持ちが変わった事で、行動が変わっただけだった。耐えられなくなった、それだけだ。
自分はどうだろうか。

オタコンは階段の下から、怒ったような顔で自分を見上げている。
それが、まるで怪物に責められているような気にもなった。
身体能力にも知能にも恵まれ、その上並みの容姿にまで恵まれた。周囲の人間だってそうだ。
同じクリーチャーだとしたら、自分はあまりにも優遇され過ぎている。

「そうだな。俺は」

たとえできそこなった部分が違っただけの、同じできそこないだとしても、それを認めたら多分、多くのものが台無しになるのだろう。
だから、貶める訳にはいかない。
下方にある肩に手を置くと、相手はほっとしたように頬を緩め、すぐに怒った顔を作り直した。
手に持った花を押し付けられ、思わず受け取って見つめる。

「全く君ってやつはさ、もうちょっと周りに目を向けるとかした方がいいよ」
「そういうもんか」
「そうだとも」

くるりと背を向けて、とっとと階段を降りていく背中と花を交互に眺めながら、ふと、怪物の中にあった愛情という名の精神は、どこからやってきたのだろう、と考える。
自分のところにも、やってくる日がくるだろうか、いつか。

「おい、ほら、お前の小道具だろう」

アパートから夜の街に出たドラキュラ伯爵は、一見そうとは分からないフランケンシュタインの怪物に花を渡し、共に歩き始めた。

ハロウィンの夜、肩を並べて、賑やかなパレードの喧騒の予感に向かって。








END


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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