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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  ケ・セラ・セラ  

ケ・セラ・セラ :MGS短編。全てが終わった、後の後で。

 




「人生は、アップでみると悲劇だが、遠写でみるとコメディだ。」

チャールズ・チャップリン







ずっと後になって思い返すと、彼についての記憶は、些細なおかしな事ばかりだ。
変に意地っぱりで、頑固なのに物分かりのいいふりなんかして、意外に下ネタが好きだったり、全く伝説の英雄、なんて感じじゃない。

でも見た目はいかにも気難しくて、冷静な老齢の元兵士って感じだった。
普段はそうやって厳しい顔ばかりしていた。
いつも不機嫌そうに、唇を引き結んで、つまらなそうに前方を見つめていた。口髭で隠れて、多少ましには見えたけど、口がへの字になってるって、誰が見ても明らかだった。

なのに、一番鮮明に思い出すのは、それがちょっと緩んで、瞼が一瞬だけ閉じぎみに下りて、皺が深くなった笑顔だ。
そういう時、すごくいい顔で笑うのに、滅多にそんな表情はしてくれなかった。
それが勿体なくて、だからいつも、何か笑ってもらえそうなネタを探した。
彼が可笑しそうに顔をしかめるのが好きだった。
楽しい思いをしてほしかった。


そう、思い出したら楽しいことばっかりあった。
悲しいことや気の毒なこと、辛いこと、みんな、思い出っていう宝箱の中の、キラキラ光る宝石みたいに思える。
決して大きな宝石じゃない。
いつでも自分の人生を左右するような、大きな出来事ばかり起きたような気がするのに、宝箱に入ったら、みんな可愛らしい小さな輝きだ。
そんな、たくさんの宝物を僕は持っていて、何も、何一つ失っていない。


フォーカスを変えたら、彼の人生だって、なかなかに滑稽だった。
本人はすごく頑張っているのに、なぜかすっかり蚊帳の外だっり、何かや誰かの掌の上で、一生懸命転がっていたり。
落とし前をつけるつもりで、結局のところ、なるようにしかなってなかったり、盛大な兄弟喧嘩だと思っていたら、実はお互いに別人の代理同士だったり。
間抜けなことだらけだった。
でも頑張った、すごく。それが全てだ。

彼をちゃんと、彼個人として扱ったのは、もしかしたら僕とサニーだけだったかもしれない。
だったらいいな、と思ったりもする。
彼が、ちゃんと自分自身として生きられた場所があったとしたら、それを提供できていたのが僕だったらいいのに、そう思う。
そんな風に感じてくれていたんなら、いいのにって。

僕はいつもそうなんだ。
目の前の人がいなくなってから、その相手が、生前に感じていたことを想像するしかなくて、こうだったらいいのにとか、そうであってほしいとか、希望ばかり挙げている。
もしかしたら、自分のために考えるのかもしれない。

でも彼や、ナオミや、ウルフや、エマや、親父が、生きていた間、少しでもいい、輝いた宝石も、その身に持っていたならよかった。
そんな風に思うのは止められない。

たとえ美化していたって構うもんか、って思う。
暗黒の人生なんてないんだ。
一筋の光もなかったら、生まれてきていないんだ。
この世界に、生まれて、意味があって、満たされなかったり気づかなかったりしても、何も持ってない訳じゃない。
彼だって、罪の他に持って生まれた輝きと、死ぬまでにいくつかは、手に入れた輝きだってあったはずだ。
絶対にそうだったって言ってもいい。

甘かろうが、綺麗事だろうが、世界が違おうが関係ない。
この世には、捉え方によって全く変わってしまうものばかりが存在していて、もし誰かにひねくれた目で見て否定されても、僕はこの考えを改めるつもりはない。

世界は今のままで完璧だ。
不完全によって完成されて、だから僕たちが生きている。
より完全に近いのは宇宙空間で、だけどそこでは僕たちは、肉体を持っては生きてけないんだ。
命を形にするためには、不完全であることが不可欠で、命が形になっている今が、今こそが完璧だ。


僕もやがていつか、完全な世界に戻っていくだろう。
そうしたら、きっと彼にまた逢える。
きっと。








そのある日は、思いがけずやってきた。

人が息を引き取るのは、夜明け前が多いそうだ。
彼もそれに漏れず、日の出る前に、眠るようにこの世を去った。
もう、兵士だった頃の厳しさも、気を張ったところもない、穏やかな寝顔だった。
息をしなくなったら、余計にそう感じた。
僕にできることも、なくなった、なくなってしまった。
もしかしたら戻ってくるかもしれない、そんな、ありもしない希望にすがって、ずっと体をさすっていた。
冷たくなっても、ずっと。

最後に交わした言葉は、何だか分からなかった。聞き取ろうとしたのに、できなかった。
でも彼は、僕の名前を呼んでくれた。
最後に、話しかけてくれた。
今思えば、それが僕への最高の宝石だった。人生で一番大きな宝石だ。
生きている間に、もうこれより大きな、煌めく宝物をもらえるかどうか分からない。
彼が僕にくれようとしたもの以外で、一番の贈り物。そのくらいの、特別な輝きだ。

別れの日、サニーが声を上げて泣いたのを初めて見た。だから僕は、叫んでしまわずに済んだ。
彼女がいたから、無茶苦茶に、喚きながら走り出さずに済んだ。
神様を呪わずに済んだし、自分や誰かを、責めたり憎んだり生け贄にしたりして、心の均衡を保とうとか、ばかなことをしなくて済んだ。
だから彼女を失ったら、僕はどうなってしまうか分からない。
今はそう思う。

以前は、彼に対して、そう思っていた。
少しずつ覚悟を決めながら、それでも、自分がどうなってしまうか、全く想像もつかなかったし、怖かった。
いつも不安だったし、彼にはそれが分かっていたらしかった。
迷惑をかけないようにしたかった。煩わしいと思われたくなかった。
でも、多分彼にとって、この世で一番のお荷物は、僕だったんじゃないかと思う。
それから、彼は荷物を背負い込むのを嫌がらないでいてくれた。
本当は嫌だったかもしれないけど、ほんの特別な、許しをくれていた。
彼の人生に、干渉して、煩わしてもいい、そんな人間はそういなかった。
少なくとも、彼が認めた中には数人しかいない。
僕は運がよかった。


そんな風に一緒にいられて、もういくつも思い出を分かち合ってきていた。
あれは彼が、眠ってしまうほんの数日前だ。

「人生ってやつは、ケ・セラ・セラ、だな…」

彼はベッドで、うっそりと呟いた。
意外だった。

もうほとんど寝たままで、一層細くなった手足を、辛いからって僕にさすらせるのが日課になっていた。
放っておくとむくんで、血流にも問題が出てくるから、言われなくたってもちろん、マッサージでも何でもするつもりでいた。
でもマッサージなんてしなくても、話をしながらさするだけでよかった。
それが、楽になると喜ばれた。
本当に年を取ると、体も心も、感じ方が変わるのかもしれない、そんな風に見えた。
らしくない一言も、無理に言ったんじゃない、彼は本当に、そう思ったんだ。

「ケ・セラ・セラって、ヒッチコックの『知りすぎていた男』で、主人公の奥さんが歌ってた曲だっけ?」
「ああ…そうだったか?スペイン語だな。なるようになる、とか、そんな意味だ」
「なるようになるさ、か。いいね」
「そうだな」

彼は小さく笑っていて、もう本当に皺くちゃな、年寄りの老人、って感じがした。
穏やかだった。
それからずっと、穏やかだった。

最後の日からしばらくは、脳が溶けて目からみんな、流れ出てしまうんじゃないかと思った。
体の中の水分が、全部、涙になって出ていって、自分が干からびて動けなくなるんじゃないか、って気がした。
けれど、そんな事にはならなかった。

サニーと抱きしめ合って、現実に耐えた。彼女の力のこもった腕。僕を救った、第二の腕。
やがて、思ったより早く、平穏な精神が戻ってきた。
人間は、生きていくようにできているんだ。人生であの時ほど、人間であろうとした日々はない。
どうでもよくなりそうな事柄を、あれこれ気にして踏みとどまった。
そんな風に尊厳を保てたのも、やっぱりサニーがいてくれたおかげだ。
僕が去る頃には、きっと彼女にも、僕にとってのサニーのような人ができるだろう。
そうなるように暮らそうと思っていたし、そうなるって分かっている。
だから、彼女も僕も、大丈夫だ。
彼もきっと、大丈夫だっただろう。

恐ろしく長い別れにも、ずっと感じ続ける不在にも、僕が耐ていられるように。
彼も一人で去ることに、置いていくことにも、耐えられなかったことはない。
この世に、耐えられないことは何一つない。
そう言ってもいい。








墓標は、ちゃんと立ててもらえた。
彼の父親の分と一緒に。
もし駄目だったら僕が立てるつもりだった。
花を持って来なくても、ここには白い花がいくらでも咲いている。

命日には、ちゃんとみんなで来ようと思う。今日は予行練習だ、一人だけ。
いい天気だし、気が向いたからね。

こんな風に晴れた日には、一緒に外に出たことを思い出す。
晴れた日には、暑くなければ結構、機嫌はよかったって気がする。風に当たるのは好きみたいだった。
覚えていることはいくらでもある。
雨の日には、窓を眺めたりしたこと。それから雨の任務のこと、タンカーで風邪を引いたことも。
だから雨が降ると、濡れるのにちょっと不機嫌になった。
雪の日には、雪原と背中ばかり思い出す。あの日、出逢った日のことは、未だにはっきりと脳裏に再現できる。
やっぱり風邪も引いていて、人間らしいところもあるんだ、なんて思ったっけ。

それから、忘れられない朝焼けも、ずっと胸にある。

そんな、全ての記憶が、輝かしい光をまとって散らばっている。
僕の宝石箱の中に。








君の宝石箱はどうだっただろう?
なるようになったって、思った人生だったんだよね?
なるようになるもんだって。


「本当だね…人生はケ・セラ・セラだ」

君は、君にしては意外なことを言ったけど、それは単なる事実でもあった。
だって僕もそうだ。僕も、生きていけなくなるなんてことには、ならない。
誰かや何かのせいで、生涯がどうにかなってしまうようなことには、ならない。
心の芯まで、魂まで打ちのめされて、傷つけられて、死んでしまうなんてことはない。

どうしようもないことも、いつかは宝箱の中身になってしまうんだ。

そう考えると、僕の人生もいかにも滑稽な感じがするよ。
思うに、みんな人生ってやつに振り回されるために、生まれてくるのかもしれないね。
それで綺麗な色になった石ころを集めてさ。
そういうのってどう思う?
きっと嫌いじゃないだろうけど。

そう、君流に言うと、そんなのも悪くない、って感じかな。
悪くない。






スネーク、君は人生を愛していた。
そしてきっと誰のものよりも、まばゆい宝石箱を持っていた。

君がずっと生きたいと願った、君の世界。
この世界で。














END





 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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