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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  プレゼント・ツリー  

プレゼント・ツリー(1):MGS小説。お二人初めてのクリスマス到来で友情を深めたいお話。

 



冷たい風とは裏腹に、世間では温かな家族や恋人の温もりが店先に謳われる季節がやってきていた。
赤と緑に彩られ、ジングルベルの流れる年末の街。
ショーウィンドーには様々な装いのツリーが姿を見せ、宿り木や天使と、この季節ならではの飾りが、店を賑わしている。

デパートの特設されたコーナーでは、立派な髭を蓄え、お決まりの赤い上下に黒いベルトのサンタクロースが、並んだ子供たちを順番に膝に乗せ、プレゼントに欲しいものを尋ねていた。
それは脇に立つ保護者のためでもある。彼らは子供達のサンタへのお願いを聞いて、この冬の買い物を決めるのだ。
通りかかった二人連れの片割れ、眼鏡の男が、その様子をにこにこと遠巻きに眺めている。
片手で掴んだスエードの上着の裾を引っ張り、持ち主に笑顔で話しかけた。

「スネーク見てくれよ、サンタだよ!いいねぇ。君はいくつくらいまで信じてた?」
「はなからフィクションだと思ってたが。聖書と一緒だろう」
「うわ、爆弾発言だねそれ」

不機嫌な顔で振り返り、それでも一応返事はしてくれる屈強そうな男に、オタコンは目を丸くして、曖昧な笑みを向けた。

「どこがだ」
「聖書のくだり。君のジョークは反応に困るよ」
「……」

別にジョークを言ったつもりのないスネークは、益々渋い顔になったが、それ以上は黙っていた。
二人でセーフハウスに暮らすようになって、週に一度の買い出しには、差し迫った用事がなければオタコンも付いてくる。
彼は自分の相棒を、相棒とはいえ最後の隠れ家に迎え入れた事に、ひとしきりの後悔と、諸々の憤りを感じていた。
日々は滞りなかったが、新しい隠れ家を探そうという気持ちはいつまでもある。
その気持ちだけが、まだ逃げ場があると思える唯一のエッセンスだという事に、本人は気付いていなかったが。

春から初夏の数ヶ月、アラスカの自宅でメリルと過ごしたスネークは、その後オタコンからの申し出を受け、フィランソロピーを立ち上げるために家を出た。
置き手紙と処々の手続きだけをしてきた、お世辞にもましとは言えない、酷い別れ方だった。
活動の拠点になるはずの事務所も登録用に準備はしたが、足を向ける事は殆どない。行けば必ずどこかの機関に存在を確認される。安全のためだ。
こうした無駄とも思える出費と活動内容のお陰で、彼らのNGOの財政は常に逼迫していた。
流れ者のように二人、日々を凌ぎながら転々と生活をしてきて、先月とうとうその寄る辺を、彼の最後の砦にまで移したところだった。
いつまで続くか分からない暮らしの、これが初めてのクリスマス、そして年越しになるだろう。

「スネーク、僕トイショップ見てきてもいいかな?」
「好きにしろ」
「じゃあ、後で下のカフェでね」

オタコンは毎度のように単独行動をしたがり、スネークは面倒なので了承する。
しかし実際に一人でうろつかれ、拉致でもされたら事だ。そんな風に考え、結局見つからない位置から尾行するような真似をしていた。
誉められた事ではないと分かっている。
他人の存在が、それも必要な他人の存在が、彼の悩みの種だ。
何かあったらと考え、常に最悪を考える。他人は荷物になった。
それが、何かあっても大丈夫だとは思えない不信感なのだと、教えてくれるような親切な人間も、対人関係に聡い人間も、彼の周りには存在しない。
以前は、元々の上官のキャンベルが、そういった苦言も買って出ていた。
しかしお互いとうに現役も退き、シャドーモセス以降は彼とも数度、連絡を取ったきりだ。
メリルとろくでもない別れ方をした、そんな負い目もあった。

「馬鹿馬鹿しい」

盛大にクリスマスソングのかかる大型デパートでは、親子連れがひしめき合っている。
この時期の主役は子供達で、彼らが親を従えて走り回るような巣窟に、足を踏み入れる気になれない。
一瞬の躊躇のあと、彼は踵を返した。
もういい。そんな気になっていた。何かあっても構うものか、好きにするさ。
カフェでブランデー入りのエスプレッソでも飲んで待っていればいい。
クリスマスというのは、およそ自分が生きているのに相応しくない気持ちになる時期だ。自殺者が多く出るのも頷けた。


「あれ、今日は来ないのか」

オタコンは自前で改造したPDAに目をやりながら、意外そうに呟いた。
搭載させたGPS機能でスネークの位置を確認すると、まっすぐにカフェに向かっている。
以前、買うのを迷ったプラキットの会話が通じたのを不思議に思って、鍵の付いているホルダーにちょっとした細工を施していた。ごく小型に改良した発信器。
いつも目当ての物を見始めたらどうでもよくなってしまうので、スネークが付いて来ていようが別に構わなかったし、何か言うつもりは微塵もなかった。きっと用心のためだろうと思っていた。
それが突然放ったらかしにされて、もしかして発信器がばれたのかと不安になる。
しかしGPSには位置がはっきり表示されているのを見ると、ばれたとしても、相手も何も言わないつもりだろう。
そう判断したオタコンは、だったらいいかという気になり、当初の予定通り、トイショップに足を向けた。
波風が立たなければいい、その程度の認識だった。


街は年内最大のイベントを前に、どこに行っても似たような雰囲気だ。
カフェもその例に漏れず、ツリーやサンタが店内を飾り立て、賑やかだった。
オタコンが一人買い物を楽しんでいる最中、スネークはコーヒーを片手に、ぼんやりと時計を眺めていた。
奥のテーブル、店全体が見渡せる席に、壁を背にして座っている。出入り口からは入って来ないと見えない位置で、襲撃を受けにくく、反撃はしやすい。
運転を考え、酒入りコーヒーは控えておいた。おかげで二杯目からは無料だ。
いつでも連れを待つ時間はまちまちだったが、早く終わった試しはない。一緒に歩き回っているのと違い、ただ座っていると、余計に時間を長く感じた。
別に苦ではないが、暇潰しに本でも買うんだったという気になる。窓の外を見やると、晴れていても空の色は薄い。
そんな彼の元にウエイトレスがコーヒーを足しにやって来て、愛想よく笑いかけた。
赤毛の美人だ。ほんのそばかすの痕があるが、お嬢さんではない。遊んでいそうな印象だった。

「待ち人来たらず?」
「…いや、買い物中だ。今日は混んでるな」
「そうなの。クリスマスも近いし、みんな大変よね」
「そうだな」

他人事のように話すところを見ると、クリスマスの予定はなさそうだった。一緒に過ごす相手を物色中かもしれない。
コーヒーを受け取りながら話しかけようとすると、その向こうから声がした。

「やあお待たせ!あ、僕もコーヒー貰えるかな、アメリカンで」
「アメリカンね」

ウエイトレスは一瞬意外そうに二人を見比べたが、やはり愛想良くカウンターを入って行った。
その様子と、相棒の抱えたツリー飾りの箱を見て、スネークは舌打ちしそうになるのを堪える。
彼女に何か思うところがあったとしても、この際良しとしよう。しかし目の前の男の抱えている物は一体、何なんだ。

「それは一体何なんだ」

気付くと内心思った事が口から漏れていた。その不機嫌極まりない声も、オタコンは気にならないのか、楽しそうに話をする。

「これかい?ツリーだよ。いいだろ、やっぱり緑の木に、赤とか金とかがいいよね」
「何がだ」
「え?ああ、他にも真っ白い木で、青とか銀色の飾りの綺麗なのもあったんだ。何ていうか、そう、洗練されてる感じ?ていうのかな」

別にそんな事は聞いていない。いないのだが、相手は自分の話を上機嫌で続けている。

「綺麗なんだけど、クリスマスって言ったらさ、緑に赤だろ。あと星とか靴下とか付いてたりして、賑やかなのの方が雰囲気あるよね」
「……」

何でツリーなんぞ買ったのか、という分かりきった疑問を、スネークは口にしなかった。
つい先々月に、ハロウィンに付き合わされて仮装したばかりだ。今回もどんな事になるか、想像してみれば分かる事だった。
しかしこのイベントだけは、残念ながら付き合って何かする気にはならない。
何と言ってその気がないと伝えていいかも分からなかった。
分からないから、いつも黙って好きにさせているのだが。

「祝うなら勝手にやれ」
「え、…あれ、どうしたんだい?急に」

拒絶され、オタコンはこの時初めて、相手の不機嫌は見た目だけのものではなく、実際に機嫌が悪いのだと気がついた。
どうして不愉快にさせたのか、心当たりは発信器の事しかない。恐る恐る上目遣いに正面の顔を窺ってみるが、自分からそれを話題にする勇気もなかった。
ハロウィンには、親睦を深めたくて無理やり仮装してもらったり、パレードに参加したりした。でもそれは上手くいって、スネークも楽しんでくれたらしかった。
ぐっと距離が縮んだような気がしたし、切っ掛けとまではいかなくても、その後にセーフハウスにまで転がり込むのを許してもらった矢先だ。
だから今度のクリスマスも、一緒に思い出でも作って、楽しく過ごせると信じていた。微塵も疑わなかっただけに、怖じ気づきそうになる。
口の中が乾いた。

「アメリカンどうぞ」

ふいにカップをテーブルに置かれ、視線を上げると、先程のウエイトレスがにっこり笑っている。
ちょっとセクシーな感じだけれど、下品な感じはしない女性だった。
どうも席の雰囲気が妙だと気付いたらしく、いたわるように声をかけてくれる。

「かわいいツリーね」
「そう思うかい?こういうの憧れだったんだ」
「いいじゃない?素敵」
「ありがとう」

何だか味方を得たようでホッとして、オタコンはつい心の内を打ち明けていた。全く関係ない他人の方が、本音を話しやすかったりするものだ。
その様子を見ていたスネークの眉間の皺が深くなったが、それでも話をするだけの勇気が少し、湧いてきた。
彼とまともに話をするには、どこか心構えが必要で、だからあまり深刻な話はしないで避けて通ってしまう。
しかし思い返してみれば、スネークだけでなく、誰に対してもそれは同じだった。
真剣に会話するのは怖く、覚悟がいる。
目の前にいる伝説の英雄とは、出逢った時の状況も特殊だったから、それで随分頑張って話をした方だ。
あのシャドーモセスで。

「お代わりは呼んでね。ごゆっくり」

ウエイトレスは二人にそれぞれ笑顔を向け、テーブルを後にした。
感謝を込めた笑顔と、困ったようなしかめっ面が、それを見送る。彼女はすぐに他のテーブルに呼ばれて行った。
その様子を背もたれ越しに眺めていた眼鏡の男は、意を決したようにテーブルに向き直り、コーヒーを煽って口を開いた。

「えーと、まず聞いていいかな」
「何だ」
「その、僕が気に障る事した、んだよね」

今最も触れたくない話題を振られ、スネークは口を引き結んで相手を睨む。
睨まれたくらいで怯んでいたのでは、彼とは些細な話もできない。視線を極力気にしないようにしながら、オタコンは先を続けた。

「だったら謝るけど、その前に君には、何がどんな風に不愉快なのか、ちゃんと聞いときたいっていうか…」
「俺は何でお前がクリスマスなんぞ祝いたいのかを知りたいな。下らないイベント好きは何でなのか」

返ってきたのは予想外の返事だった。てっきり発信器の文句を言われると思っていたので、つい声が大きくなる。

「く、下らないって、そんな風に思ってたの?」
「お前は思ってなかったのか」

言われて、言葉に詰まった。確かに、自分でも多少、馬鹿みたいだとは思っていた。一人だったら興味のない類いの行事だ。
それでも浮き立つ気持ちもあったのも確かで、相手が迷惑していると、面と向かって知ってしまうのはショックだった。

「そりゃ多少はね。でも君といるから、何かしようって気になったんだ。まさか嫌がってるなんて思わなかったよ。ごめん」

胸に冷たいものが込み上げ、一気にそれだけ言うと、オタコンは逃げるように席を立ち、足早に出口を目指した。

背後から声がしても、もう振り返らなかった。








つづく


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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