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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  家族の肖像[続]  

家族の肖像(1):MGS小説。ノーマッドでの他愛のない生活のお話。

 



雲の上、天候は上々だ。
ノーマッドは二ヶ月ぶりに、格納庫間の移動を行っている。数日仕事だ。
昼夜を問わず、いくつも軍の飛行場を経由して飛び、最後のフライトで航路を切り上げ、データを改竄する。暫くはカナダに身を寄せることになるだろう。
ダミー会社の工場を模した格納庫だ。
現地に査察でも入れば一発でバレてしまう作りだったが、過去の経緯からいって、愛国者達がそういった生の行動を起こしてくることは、ほぼないと言っていい。


ノーマッドの簡易キッチンでは、今日もスネークが煙草の煙をくゆらせている。
換気扇の前の定位置、ガーコと睨めっこしながら、いつもの思案顔だ。
何を考えているのか、多分自分のこと、この先のこと、愛国者達のこと、そんなところだろう。

密閉空間だ。換気扇が回っていたって、階下にいても、煙草の臭いはしてくる。
そのたび、サニーは気遣わしげに僕を振り返り、それから上の階を怒った顔で見つめる。それを見ていて、やっと気がついた。
サニーが煙草を嫌いになったのは、もちろん煙草の非生産性もあるだろう、スネークの体を思っての気持ちもある。
でも、その気持ちを育てていたのは僕だった。

煙草、やめてほしい。心配だから。体の年齢を考えたら、癌になったっておかしくない。
それが全部、サニーに伝わっている。
彼女は僕が強く言えないから、代わりにスネークに立ち向かってくれていたんだ。正確には、スネークの煙草に。
それがすっかり、彼女のパーソナリティーに加わってしまった。
僕たちは親子じゃない。けれど、一緒に暮らすお互いの影響力は、実の家族とかそうじゃないとか、関係ないんだ。
そう実感する。
おもむろに彼女が立ち上がって、階段へと歩を進めようとするので、咄嗟に声をかけた。

「サニー」

換気扇の前が、スネークの唯一の避難場所だ。他で吸っているなら文句もつけるけど、逃げ場のない雲の上で、煙草にすら逃げられないなんて、やっぱり気の毒だった。

「ここの大学のセキュリティ、手強そうなんだ。これから取りかかるんだけど、ちょっと手伝ってもらえないかな」
「……」
「頼めるかい?」
「うん」

一瞬、なぜ止めるのか、という顔をした彼女だったが、なるべく和やかに告げると、諦めて自分の席に戻った。
彼女がスネークに何か望もうとするのは、それも僕の影響かもしれない。
彼に求めることは多い。
投げやりになってほしくないとか、体を大事にしてほしいとか、サニーと仲良くしてほしいとか。
死んでほしくない、とか。
彼の老化が目に見えて進行する前は、考えた事もないような願いが、頭をよぎるようになっていた。

「そうだ、向こうに着いたらだけど、ちょっと買い出しに出てくるからね。留守番、頼むよ」
「…うん」
「何か欲しいものあるかい?」
「ううん」

買い出しは口実で、大学に行くのが目的だった。
カナダのトロント大、ミシサガ校の、ある医療研究が目当てだ。スネークを連れていく。
今のはそのための下準備で、大学のサーバーにバックドアを作り、侵入に必要な工作をしておいて、後からスネークの記録を抹消したりする時に使う。
サニーには多分、こういうの全部分かっているんじゃないかと思う。僕が色々、話しにくくて、つい誤魔化してしまうって。
それでも彼女は、いつでも黙って見送ってくれた。
そんな姿は、優しくて健気で、少しだけ不憫だ。

彼女の精神は、ある面では大人並みに成長していて、理性的だった。子供のように感情で動いたりはしない。
その理解力で、あらゆる人間の行動を分析でき、慮ることができる。頭では。
でも多分、心は違う。
例えばノーマッドから出られないことだってそうだ。理性ではどうにもできないことが、人間にはある。
頭で分かっているからって、辛くないとは限らない。

一人が平気な子供だって、寂しいんだ。僕もそうだった。だから妹に依存したし、義母にも依存した。
今だってそう。スネークやサニーがいなかったら、そう思うとゾッとする。
大人だって寂しいのに、まだ学校に上がるくらいの年齢の女の子が、寂しくないはずがない。
愛されたいんだ。
でも、どんな風にするのが愛してるってことだか、僕にはよく分からない。
テレビドラマの家族みたいに振る舞うのがそうだって言うなら、僕には残念ながら無理だ。
スネークは更に悪い。

人生でいつでも肝心なことは、彼がいれば安心だった。彼には全てが分かっているみたいだったから。
ところがサニーの事に関してだけは、伝説の英雄も全く当てにはならない。
だから彼女に対して僕は、常に手探りで、自信がなかった。未だにそうだ。
それでも日々は重なっていくし、できることは限られている。それをやらなきゃ。


海沿いの田舎にひっそりと建つ工場。
ノーマッドほどの輸送機を格納するとなると、場所も施設も大がかりだ。
島でも買ってしまった方が安上がりだったかもしれない。衛星で監視できないような手頃な島があればだけど。
それに本拠地を定めてしまうのは危険な可能性もあった。スネークももう現役というわけにはいかないし、何より陸の施設の外敵侵入への脆さは、彼が今までに散々証明している。

信用のおけるパイロットを二人、外出する時には必ず緊急時の移動を頼んで、ノーマッドを降りた。
スネークは大学に行くというのでうんざりした顔だ。こういう時はモルモット並みにあれこれ検査されるし、仕方ない。
彼は肉体が年を重ねてから、機嫌の悪そうな時に、実際にそうだったりする事もよくあった。若い頃は、何に関しても驚くほど冷静だったのに、今は怒りっぽくなった気がする。
体が年を取るって、脳も老化するし、やっぱり精神にも影響があるんだろうか。

「それじゃサニー、明日には戻るからね」
「…うん」
「ほら、スネークも。黙って行く気かい?」

先に車に向かおうとする彼の上着を引っ張ると、スネークは渋々振り返ってサニーを見つめる。

「……行ってくる」

挨拶をされて、彼女はやっと顔を上げた。少しホッとしたようにも見える。

「…行ってらっしゃい」
「じゃあね、気を付けるんだよ」

手を振って、入り口にたたずむ様子を見たら、置いてきぼりの顔で、足元とこちらを見ている。
外に出られたら一緒に行けると思っているのかもしれない。
それだって進歩だった。
以前は外に感心を示すこともなかったし、見送りに出ることもなかった。彼女の世界は閉ざされていて、僕らがその一部になるのだって、時間がかかったものだ。

「お土産買ってくるからね」

笑顔を向け、ほんの小さく手を振る彼女を置いて、格納庫を後にした。


空港まで車で走る間、助手席のスネークは窓際に持たれて寝ていた。髪が白くなってから、彼はよく眠る。でも眠りは浅いみたいだった。
空港からは国内線でトロントに飛んで、トロント内はどの交通機関を使っても定額のシステムがあった。よくできてる。
アポの時間までは間があったので、市内を見てまわる事にした。なんだか昔の旅行みたいで懐かしい。
当てもなくバスに乗って、色んな通りを移動した。
マンハッタンを思い出すビル街もあれば、可愛らしい街並みの通りもある。本国より、道は綺麗な印象だった。

「このTTCって便利だね。地下鉄でもバスでも、どこまで乗っても基本3ドルで、乗換えもきくなんてさ」
「優秀だな」
「どこに行こうか、CNタワーとか行ってみる?」
「土産でも見たらどうだ」

スネークは興味なさそうに、流れていく道路沿いの店を眺めている。

「写真撮って送ってあげようと思って、サニーに。折角だし、観光名所とかの方がいいだろ?」
「観光名所ならネットにも画像がある」
「つまんない事言わないでくれよ。君の映ってるのがあるかい?」
「誰が映ってようが一緒だ」
「あーはいはい」

埒が明かないので、勝手に地図を調べて道順をチェックしていると、彼は呆れた視線を隣から注いできた。

「どうせ、買い出しだのと言って出てきたんだろう。嘘がバレるぞ」
「そうなんだけどさ。ついでだから寄ったとか言えばいいよ」
「それで、サニーはどうしてる」
「ん?うん、ちょっと待ってね」

携帯でノーマッド機内を映し出すと、彼女は今まさに簡易キッチンに向かっているところだ。

「おっと、目玉焼き」
「…ああ」
「今日は2つみたいだね。占いは君と僕の分かな」
「犬猫じゃあるまいし、いつまで付けとくんだ、その監視カメラ」

嫌そうな声を出しつつも気になる様子の彼に携帯を渡すと、渋い顔ながら熱心に眺めている。
当初カメラには反対された。確かにプライバシーの侵害だ。
でも愛国者達の施設にいた頃にも、部屋にはカメラが設置されていて、映像が残っている。
自閉症の症状らしきものがたまに出ていて、壁に頭を打ち付けたりもしていた。一緒に暮らしてからはない行動だったけれど、用心のためだ。
もちろん、それも半分は建前だった。
心配だから、つい。理由があったらどこまででも、こうやって全部を把握しようとしてしまうだろう。
僕の言わば病気だ。

「そのうちやめるさ。そのうちね。サニーだっていつまでも子供じゃないんだし」
「子供なら監視していいか?お前がしっかりしろ」
「…分かってるよ。君はいつでも正しいとも」

口を突き出してせめて抵抗して見せたら、スネークはばかにした顔で笑って、携帯を返してくれた。

「誰かさんには通用しないがな」
「だからよすって!…そのうち」
「そのうちサニーも年頃だ」
「その前にやめるよ!」

むきになって食い下がったら、珍しく声を出して笑われた。からかわれているんだ。

「君だって煙草やめないじゃないか」
「やめるかもしれんぞ、そのうち」
「……、分かった。君が性格の悪さに磨きをかけたってのはよーっく分かった」

不満そうにしながらもう一度地図を確認していると、彼は笑いながら窓の外に目をやり直した。少し上機嫌になったように見える。
何でもいいや、と思う。気分よくしていてくれれば。

「観光もいいけど、お腹もすいたねぇ」
「まともな食事の機会だな」
「そーいう事言わない。目玉焼きだっていいもんだよ。出てくる頻度と時間帯と出来によっては」

そう、毎日365日、味のない焦げた目玉焼きが、いつ出てくるか分からないんじゃなければ。

「あれは何だって食事と関係ない時に出てくるんだ」
「食事時にも出てきてる」
「食事時以外は何で出てくるんだ」
「さぁ、占いだしね」

困った顔で笑うと、冷たい視線が向けられた。彼はなるべく拒否反応を出して訴えているようなのに、僕が喜ぶふりをするからサニーがやめないと思ってる。

「本人も、好評じゃないとは分かってるんだよ。実際」
「だったら何で作るんだ。毎日毎日」
「君だって煙草やめないだろ」
「またそれか…」

再び傾きそうな機嫌を上向かせるために、ネットで評判の店をサーチして見せる。

「それより今日は美味しい卵料理でも食べようよ、ほら」
「卵はもうごめんだな」
「あーね、同感だ。じゃあ美味しい卵以外の料理でも食べよう、それがいい。カナダは何が有名かな~」
「……」

わざとらしく浮き浮きとした声を出して調べていると、脇からぼそりと呟く声が聞こえた。

「カナダも多国籍だからな。強いて言うなら、サーモンかロブスター辺りじゃないのか」
「へえ~、さすが年の功だねぇ。スネークじいさん?」
「どうやら拳も味わいたいようだな」
「とんでもない!暴力反対だ」

じいさんと呼ばれて、彼は心底嫌そうな顔で睨み付けてくると、そっぽを向いてしまった。
ちょっと調子に乗りすぎたみたいだ。

「スネーク、悪かったよ。ロブスターの有名なお店がある。ここなんかどうかな」
「知らん」
「悪かったってば、ほらここ」
「知らん」
「店員さんが美人だよ」
「……」

まさか僕が、こんな風にスネークのご機嫌を伺う日がくるなんて、二人の時には考えもしなかった。
でもこうやって感情表現してもらえるのは、深刻な顔で黙って耐えているのより、よっぽどいい。
若い頃の彼は、冷静だったけれど、それは耐えていたからでもあるんだ。
人生の、あらゆるものに。

「じゃ、ここで決まりだね」

バスはのんびりとした日射しの中、目的地まで軽快に、僕らを運んでいってくれた。










つづく


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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