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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  美しの国いずこ:34丁目の~[続]  

美しの国いずこ:【34丁目の奇跡の存在】MGS小説。クリスマスのお2人、プラント後。

 



いつも心にあるんだ。

いつか、どこかみたいに素晴らしい世界が、この世にはやってくるって。

それは例えば、ほんのすぐそこにあるものなのかもしれない。
一瞬先の、指先の触れそうな位置に、いつだってあるのかもしれない。
もしかしたら、世界はゆっくりと、そこに向かって進んでいるのかもしれない。

すごく未来も、一秒先も、同じように存在している。
この世の全てのことわりも、この命も、胸の感情も、同じように。同じものとして。







Act.1【34丁目の奇跡の存在】




この世には、説明のつかない不思議なことが起こるんだよ。

それはとてもさりげなく、君の手に届けられるものなんだ。だから願い事が叶ったって、気付かないこともあるくらいさ。
偶然や、自分で手に入れたように感じているもののうち、どれくらいが、そうした小さな奇跡によって君にもたらされたものか、君は知らないだけなんだ。
気づいていないだけ。

そう、奇跡はそこかしこで起きてるってことにね。





「サンタクロースの歴史は古いから、きっとサンタはもういると思うんだよね」

毎年のように、他の家庭より一足早いクリスマスディナーの並んだイブのテーブル。
和やかな夕食の会話中に発せられた言葉に、スネークは何とも言えない微妙な表情になった。
一見無表情だが、目の前で見ていた彼の相棒には、それが変な顔つきになったのだとすぐに分かる。
それはもちろん予想の範囲内だったので、反応に気づきもしなかったように笑った。

「初めはいなかったかもしれないけど、人間はそういう存在を作っちゃえるんだよ。なぜなら世界の全ては繋がっているからだ」
「……」
「一人の人間にできることは限られているけど、それは無限大でもある。すべての人に備わっている能力さ。意味分かるかい?」
「さっぱり分からん」

全く理解の範疇外という風に、スネークは食事を再開した。後は好きに話せの合図だ。
それを見て、オタコンは自分も再び料理を口に運ぶことにした。

恒例の骨付きハムは、今年はシンプルに蜂蜜味で、その甘く芳しい香りを部屋に充満させている。
二人で二度目のクリスマスイブには、インパクト勝負と称してメインのハムがフランベされたのだが、炎の上がる見た目への賞賛に反して、味付けは前の年のものの方が好評だった。
そのためエンターテイメント性を持ち込むのは、今ではもっぱらデザートの方が主流になっている。
スネークが余興に甘んじるのは、年に一度、この日だけと言えた。

「もしかして今日もバナナ・フランベやる?」
「バナナがいいか」
「バナナがいいよ!美味しいし」

フランベは、レードルで火の付いたラム酒を垂らすところが、オタコンのお気に入りだ。それで毎年のリクエストになっていた。
部屋を暗くすると、まるで炎そのものを操っているかに見え、魔法でも使っているようで、それはそれは綺麗だった。

他の家庭より一足も二足も遅いツリーの飾り付けも、夕食前には済んで、あとはお披露目を待ってリビングに鎮座している。
こちらも毎年のように、無駄に力の入った可動式の仕掛け飾りが出現し、スネークを驚かせ、同時に呆れさせていた。


クリスマスイブ。世間に指名手配されて以来、滅多に戻ってこないセーフハウスへ、この日から年明けまでの間だけは、二人して身を寄せる。
ここにはオタコンの手作りしたコンピュータ・クラスターがあり、なるべくなら発見されたくない場所だった。
普段は用がない限り寄り付きはしない。
生活圏にあまり顔見知りを作る訳にもいかず、平時には定期的に場所を変えながら、いくつかの部屋を転々としていた。

年末のこの時期、世間から逃げるのではなくひっそりと隠れて、年の瀬の動向を見守るのを、片割れの博士は楽しみにしている。
じっと動けない現実に反して、まるで自由な場所にやってきたような気になるからだった。

「初めてのクリスマスディナー、覚えてるかい?」
「多少は」
「パイナップルソースのハムだったね。君はこんなに美味しい料理作れるんだから、普段からもっと味付け凝ってもいいのにって思ったもんだよ」
「レシピなんぞ短期記憶にしか入れんから無理だ。作れば忘れる」
「え、忘れちゃうの?」
「忘れる。任務中に必要なコードや何かみたいなもんだ」

ハムの甘みに多少辟易したのか、マスタードを大量に皿に取りながら、スネークは黙々と切り分けた肉を口に入れている。
オタコンは感動したような困惑したような顔で、それを見つめた。

「忘れちゃうのか…」
「料理を作れるようになる気もないしな」
「まだそれ言ってるし」

いつまで経っても頑なに、料理のできる男の肩書きを拒否する相手に苦笑しながら、甘くて香ばしい肉を噛み締める。
一体この肉のどこが料理じゃないっていうんだか。
妙なところばかり頑固な相棒を持ったもんだと思うと、苦笑は別の笑いに変わった。

「でもさ、初めてのパイナップルソースはどこからやって来たんだい?記憶の彼方からじゃないの?」
「…ああ、それは作り方がメインじゃない。彼方に教わったっていう、長期記憶からだ」

教わったと聞いて、誰に、と聞こうとしたオタコンだったが、スネークに料理を教えるような人物は一人しか思い浮かばず、口をつぐんだ。
きっと彼の愛した女性だろう。

「あれまた作ってくれよ。嫌じゃなければ」
「そのうちな」
「ほんとかい?最近君も手を抜くって事を覚えだしたからなぁ」
「あんなもの普段に作るか。時間が掛かりすぎる」

そう言いながらも、相手が意外に穏やかな顔で眉を上げるのを見て、安心して皿と向き合い直す。
毎日の食事の時には気がつかないけれど、こんな日には、自分は普段から特別な食卓を提供されているのだと感じた。

以前に比べ疲れやすくなった相棒は、毎日きっちり食事を作る回数は減ってきた。
それでも家族のいない自分達のような人間が、特異な生活を送っているにも関わらず、まるで普通の家庭に出てくるような皿を目の前にしている。

「これも奇跡だね」

そう小さな声で告げると、目の前の男はマスタードが効きすぎたのか、しかめっ面で鼻を摘まんだ。



恒例となったバナナ・フランベは、今年はオレンジキュラソーで行われた。
アウトドア用のコンロをワゴンに置き、その上でブラウンシュガーとバナナが焼かれる。
部屋を暗くすると、オタコンは少し離れた場所からリキュールの燃える様子を見守り、フォークに差してくるくるととぐろを巻いたオレンジの皮に、垂らされた炎が伝わっていくのを楽しんだ。
やがて螺旋を描きながら流れ落ちていく火の塊が滴り落ち、バナナに到達するかに見えたその直前に、姿を消した。

「失敗だな」

ぼそりと呟いたスネークは、温まっていた瓶から直接キュラソーをフライパンに注ぎ、引火させ、盛大に炎を立ち上らせる。
見ていた相棒の口からも、陽気な歓声が上がった。
仕上げにナツメグを振り入れると、それがパッパッと燃えてアクセントになる。
見るたび強烈で華やかで、でもほんの一時の、魔法のような出来事だった。

こうして炙られたのちに、オレンジの絞り汁と煮詰められたバナナは、明るくなった部屋で皿に移され、アイスクリームが添えられる。
オタコンは感激のあまり、熱々のバナナと用意してくれた人物を交互に見比べ、一口食べては、また同じようにデザートと相棒を見つめた。

「完、璧!」
「よし」

相手の反応と食べた味に、スネークも思わず声を漏らす。
基本的には砂糖と焼いただけのリーズナブルなバナナが、食卓で一体感を味わえる素晴らしいデザートになった瞬間だった。



一年で一番贅沢な食事の後には、決まってリビングで渾身の、と言っていいツリーが披露される。
初めての翌年から、サイズも一般家庭並の大きな物になっていて、運び込むのはスネークの役割だ。
その後のセッティングは全てオタコンが一人で行うのだが、今年は見るだけでなく参加型だった。

「いいかいスネーク、君はツリーのあちこちから現れるサンタさんをこれで仕留めるんだ」

そう言って、座ったソファーの背もたれ越しに渡されたおもちゃの銃には、プレゼントちょうだいの文字がペイントされている。

「シュールだな」
「いやいやこれには意味があってね、いっぱい出てくるサンタはみんな偽物なんだよ」
「偽物にプレゼントをねだるのか?」
「そうだよ。子供の夢たっぷりのお願いに、偽物サンタは撃沈さ」

スネークは一瞬頭に思い浮かんだ、夢というより欲じゃないのか、という言葉を飲み込んだ。
しかもこの場合、子供は誰で、プレゼント要求は銃で脅してなのか。
いやそれよりも、要求したプレゼントは貰えず仕舞いでいいのか?などと、突っ込む部分が多すぎる。

「偽物をみんなやっつけたらね、まぁそれはやっつけてからのお楽しみ!さぁいくよ」

部屋の電気が消され、イルミネーションが輝き出すと、同時に陽気なクリスマスソングがかかりだす。
それに少々辟易しながら、スネークはツリーの枝のあちこちから起き上がってくる、ピカピカ光るサンタ型の小さなパネルを狙った。
プラスチックの引き金を引くと、蛍光塗料で浮かび上がったBB弾が、サンタを倒し、もしくは弾き飛ばして、その都度おどけた悲鳴が上がる。
実弾ではなく勝手が違ったので数発無駄撃ちしたものの、全員の偽物を倒し終わると、てっぺんの星の向こう側にライトアップされたサンタの人形が迫り上がってきた。

「Merry X'mas!HoHoHo~!」

サンタは独特の優しい掛け声と同時に、背後の恐らく袋と思われる位置から、何かをぽんぽんと打ち出して、それがソファーに向かって飛んでくる。
思わず初めの一つをキャッチし、手を開くと、プレゼント型のチョコレートだった。
靴下に杖、ケーキや熊と、様々な形のチョコレートが次々降り注ぎ、その直撃を受けながらオタコンを見ると、自分だけ小振りの傘を差して笑っている。

「お前な…」
「おめでとう!さっきねだったプレゼント、全部君のものになったよ…ってああうん!けっこう痛いよね!ごめんごめん!」

ソファーから腰を浮かせて拳を作ると、相手は部屋のドアの方まで一目散に撤退した。
よくも毎年下らない余興に、ここまで懲り倒した物を作れるもんだ。そう呆れて振り返ると、サンタは今度は勢いよく、ふわふわ軽い白い雪を吹き出していた。
小さなスチロールの雪だった。
暗闇の中で光るツリーの色に染まって、万華鏡の中に迷い込んだような不思議な見た目だ。
スネークが目を奪われていると、背後からおずおずと声がかけられる。

「気に入ったかい?」
「ん、ああ、そうだな。最後のはいい」

素直に感想を述べられ、オタコンは子供が誉められた時のような嬉しそうな様子で、ソファーへと戻ってきた。

「よかった。中々に満載だったろ?」
「間はいらん。どうするんだこのチョコとスチロールの山は」
「君さ、まだ雪降ってるうちからそれはないよ…」

七色に輝く雪の舞い散る暗闇の中。
かつてないほど幻想的な景色を前に、これ以上ないほど現実的な事しか言わない相棒を目の当たりにして、この素敵なツリー仕掛けの作り主の博士は、がっくりと肩を落として見せるのだった。








つづく


 

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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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