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溢れるMGS愛:PHILOS-ANTHROPOS

MGS語りや小説、考察?落書きと、愛しかない一風変わったMGS日記(不定期)

 
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Category: 短編小説【もくじ】 >  鐘の音(カネノネ)  

鐘の音(カネノネ)-すべての人のための音-2:MGS小説。木星コンビと雷電。ローズとの結婚式までinアラスカ

 
鐘の音(カネノネ)~すべての人のための音~【2】








当時はまだ所有していた軍用大型輸送機、ノーマッドで駆けつけ参列した、メリルの結婚式。
その日のことは、オタコンにとっても特別な思い出だった。
相棒のいない理由を知っていたのは自分だけで、もう今生の別れだと思っていた。
あの日。
幸せな風景が、裏腹にどんなに胸に痛かったか。
そして帰ってきたスネークを見つけて、どんなにか神に感謝したか。

喜びと悲痛は完全なる一体のものだ。
生涯の中で、あんな思いはもう二度としたくないと思っても、それは必ずやってくる。目の前の幸福と引き換えに。
だからこそ、こんなにも今が大切で、かけがえのないものだと分かる。

このことについて考えるたび、たくさんの気持ちが飛来した。だがそんな思いはおくびにも出さず、彼は呑気に、今日という日の話を口にする。

「他の人の結婚式の方をよっぽど頑張っちゃうなんてさ。彼女、素敵な奥さんになったよね」
「……あいつは昔からいい女だ」

ぼそりと呟かれ、相当渋い顔でもしているかと向き直ると、声の主は意外にも静かな顔つきで目を瞑っていた。
もう未練はない、そんな風に見える。
しかし諦め上手な彼の相棒は、本当は切ないくらいに情に厚い。オタコンはそれをよく知っていた。

「逃した魚は大きいとか…」
「思うか。俺には勿体ない女だ。昔も今も変わらん」

彼女との生活を諦め、アラスカを出た時と同じ台詞を口にして、スネークはだんまりの姿勢に入る。
こうなると、彼は手強い。
でも好きなんだよね、と、心の中で呟いくと、オタコンはサニーに手振りして、彼の隣に座らせた。
誰のものになるとか、そういう次元ではなく、スネークは彼女をとても好きだ。気にかけている。
だから、何となく納得がいかないままだった。もしまだ彼が若ければ、もしかしたら。
自分の素晴らしい相棒は、その彼の素晴らしさに見合った人生を送れたんじゃないかと、そう思ってしまう。

目の前のソファーには、一見だらしなく座った祖父に、孫の少女が寄り添った光景がある。
実際には血の繋がりも何もない、あるのは過ごした時間だけ。それでも、確かに絆は存在した。
そう思っているのは一人だけではない。小さな子供の温かな体温に寄りかかられ、白い睫毛に縁取られた瞳が、諦めたように開く。
放っておいてくれの合図は失敗に終わったと悟って。

スネークが貝になるのをやめると、オタコンは話を続けた。

「でも僕は思うんだ。アキバにだって、彼女は勿体ない女性じゃなかったかな?どう思う?」
「…メリルが選んだ相手だからな。他人の決める事じゃない」
「君だって彼女が選んだ男性だったんだよ。忘れたのかい?」

大袈裟に首を振る様子に、ソファーの老人は胡散臭そうな視線を向ける。

「何が言いたい」
「うーん、こういう決断て早い者勝ちなんじゃないのかな、と思って」
「お前…物事には時期ってもんがあるだろう」
「あーはいはい、そうだった。君の選択はいつでも正しいよ」

呆れたように言われ、オタコンはとぼけた顔をして、サニーを挟んでソファーに座った。
たとえ過去の事実がどうであろうと、今のメリルは人妻だ。その事実は変わりようがない、それは分かっている。
でも本当は、スネークにだってメリルを幸せにできたんじゃないか、彼女なら、この伝説の英雄とだって、幸せを掴めたんじゃないだろうか、そんな考えはぬぐえない。そしてスネーク自身も、心の底ではそれを望んでいたんじゃないだろうかと。
彼女なら、自分が彼といられるように、何があっても一緒にいてくれただろうに。
声にならない考えは、胸に溜まった空気と共に、ため息になって消えた。
それを見たスネークが、面倒そうに口を開く。

「メリルはああ見えて、繊細で女らしいところもある。アキバはその辺を心得てるからな」
「へえ、思ったよりよく見てるもんだね」
「……」

話の内容よりもむしろ、会話が終わらなかった事に驚いて、オタコンは意外そうな声を出した。
普段ならば自分が折れて、そこで終わるのが通例のはずだ。
すると心外だと言わんばかりに横目に睨まれる。

「だって意外だろ?君が他人の心情について主観的な発言をするなんてさ」
「どこかの破壊的な観察眼の持ち主より、多少マシかもしれんと思っただけだ」
「酷いなぁ、僕だってこれでも成長したんだよ」
「それなら観察する時系列も調整したらどうだ」

表向き意地の悪そうな声で投げ出される言葉は、過去に拘っているのが当人ではない事を指摘していた。
何とはなしそれで、余分な事を考えていたんだと、気付かされる。
スネークの気持ちを慮るなら、過去ではなく今の気持ちを尊重するべきだ。いくら昔の親友を気遣ったところで、何も変わりはしない。

「そうだった。君は正しく事実しか述べないんだったね」
「皮肉を言える程度には成長したらしいな」
「そうとも、至上稀に見る皮肉屋が近くにいたおかげだ」

いかにも嫌そうな顔を作って見せると、それが気に入ったのか、スネークは小馬鹿にしたように片方の眉を持ち上げた。
どうやら少しは楽しんだらしいと分かって、オタコンも眉を下げて笑う。
間に挟まって大人しく成り行きを見守っていたサニーも、落とし所に満足したのか、目を瞑って笑顔になった。

大切な女性を誰が幸せにするとか、そういう次元でもないのだ、きっと。
この伝説の男にとっては。

「彼女、幸せになってよかったよ。君の願いだったろ」
「…ああ」

ソファーの正面にある窓からは、正面に湖が、ガラス一杯に広がってよく見える。
湖面に陽の光が輝いて揺れる様は、天国の入り口のように美しい。
先週近くまで雪が降っていたのに、急激に夏がやってきていた。一年の内でもこの時期は、時間の流れ方が違うようだ。

世界は動いていて、過去は思い出になる。それは全て祝福されていて、間違いなど一つもなかったかのように感じられた。
犯した過ちも、全部が必要なことだったのだ、そんな気になる。

「雷電もさ、そうだし。君が願えば誰だって幸せになるよ。だから安心だ」

そう言われ、スネークが脇に目をやると、寄り添ったサニーとその向こうで相棒が、満足げな顔で笑っている。
つられて彼も、うっすらと口髭の端を持ち上げた。

ここにも一つ、叶った願いがあるようで。




男達の足音がポーチから家の中に入ってくると、キッチンの方からメリルの隊長らしい声が聞こえ、メイ・リンも二階から下りてきたようだ。
お次は料理全般の準備が始まるらしい。
リビングでは、ソファーの真ん中に乗っかっていた少女が、軽やかに絨毯に跳ね、くるりと振り返った。

「ハル兄さん、手伝ってくるね」
「うん、エプロンするんだよ」
「はーい」

可愛らしい返事でサニーが部屋を出ていくと、入れ替わりに雷電が、廊下を振り返りながら入ってくる。
外での作業の間脱いでいたのだろう、青みがかった銀色のフロックコートを羽織り直すと、それが白髪に近い銀髪にもよく似合っていた。

「可愛いな」
「そうだろ?会場のセッティングご苦労様。随分本格的だね。あのアーチとか」
「ああ、輸送の重量さえクリアすれば、後は俺が運べたから。…大袈裟な事になってすまない」
「いいんだよ。メリルが張り切ってくれてるし、ヘリだってキャンベルの口利きだしね」

サニーを誉められるたびに、オタコンははにかんで上機嫌だ。
荷物は全て軍の輸送ヘリで運び、湖かもしくは木々の切れ目の陸地に降ろしてもらっていた。
雷電と家族は水上飛行機でやってきて、機体は水辺に接岸させてある。
彼が今日の主役ではあるが、未だにスネークの前では気後れするらしく、どことなく所在なさげな雰囲気だった。

「…押し掛けて、迷惑じゃなかったか?」
「いいんだって、アラスカなんかに引っ込んだのこっちだし。ねぇ?」
「……まぁ気にするな」

実際には、この場所に住もうというのはオタコンの案で、スネークは最後まで反対していた。
押し切られ、連れて来られた形で過去の地に移り住み、しかも住居は大改装され、面影もない。
そんなもろもろの経緯も含め、当人の返事も自然と不機嫌なものになる。
それを取り繕うように、隣では相棒がフォローを入れた。

「君が結婚して嬉しいって」
「うるさい」
「嬉しいくせに」

ソファーの端と端で始まりそうな、お遊びの議論の空気を察知し、雷電は意を決して二人の間に腰を下ろした。
加減して座っても、サイボーグのボディがスプリングに沈むと、両脇の体が小さく跳ねる。
驚いた両名が目を丸くして、間の男をまじまじと見つめた。
彼らの意見の応酬は、険悪に見えたとしても実際はそうでもないが、一度始まると長かった。
以前、行動を共にしていた頃には、ここの言い合いに散々付き合わされたものだ。当時は見ているしかなかったが、今は違う。
雷電は意を決して、両手を膝につき、深刻極まりない顔付きで前を見据え、今まで言いたかった一言を口に出した。

「………ありがとう。二人とも」
「い、いやいいんだってば」
「そうだ、お前はよくやった」

面食らった返事をよこす左右の二人と、順番に顔を見合わせ、彼はふと、息をついて笑みを漏らした。
こんな簡単な事が、今までできずにいた。そんな自分が可笑しかった。
それから多分、嬉しくて。

「あんた達に世話になれて、俺は幸運だった」

立ち上がり、体を反転させ向き直ると、改めて正面からソファーの恩人達を見つめる。
両手を差し出すと、それを片方ずつ握ってもらえ、握手をしてもらえた。

「ありがとう」

ずっと言いたかった、色々な想いを込めて。
しかし別の様々な想いがそれを邪魔して、本当の意味で、この言葉を述べられた事がなかった。
自分の境遇や、羨ましさ、妬む気持ちや頼る気持ち、色々なものがわだかまっていた。
自らを引き合いに出している間は、素直な心でありがたく感じるのは難しかった。
やっと、余分なものを捨て、あるいは抱えたまま、感謝することができる。

静かな満たされた眼差しが、そこにはあった。



男達が無言で手を握りあっていると、遠くからエンジン音が近付いてくる。
握手が解かれると、雷電は何かを誤魔化すように窓に近付いた。
セスナらしき機影が湖に向かって降りてくるのが見え、視界の倍率を上げると、乗っている人間が確認できた。

「キャンベルだ」
「お、最後の恩人のお出ましだね」
「大佐か」

ソファーの二人も立ち上がり、スネークは一番古い友人を迎えに、いそいそと玄関に向かう。
その様子を見た彼の相棒が、雷電にそっと耳打ちした。

「今じゃ一番歳が近いもんだから」
「ああ…」

相手が微かに笑ったのを見て満足すると、オタコンは自分も部屋を出ようとし、思い出したように向き直る。

「にしても、今のそれ日常生活用のボディだろ。なのに相当パワーが出るんだ?」
「そうだな。車くらいなら持ち上がる。ただし作戦用はこの比じゃない」

説明を聞いて、それならアーチの設置なんて楽勝だろうと納得していると、雷電もドアに向かって歩き出した。
並んで廊下に出て、話しながら玄関に向かう。

「なんか凄そうだね。近頃サイバネティック関連は、こぞって民間が参入し出したらしいし。君にも研究用にオファーが来るだろ」
「ああ。2、3箇所受けたかな。まだ全身をサイボーグにする例はまずないとかで、かなり稼がせてもらったよ」
「そうかぁ。それって関連法案が可決されたら、一気に普及が始まるだろうね」
「だろうな。なぜだ」

ずり落ちてくる眼鏡を押し上げながら興味津々で聞いていると、隣を歩く銀髪の青年は訝しげな表情を見せた。

「うん、いや。肉体の問題だけなら、そういう選択肢もまあ、あるだろ。視野に入れてもいいし」
「…スネークは、そんなに悪いのか?」

要するに、脳意外は人工物にするという選択肢を考えなければならないほど、肉体に問題が出てきているのだろうか。
玄関の手前で立ち止まり、思わず口許を歪める雷電に、オタコンは慌てて両手を振る。

「いやいや、どこか悪いとかじゃなく、老衰だから。歳のわりにかなり元気な方だと思うよ」
「ならいいが…」
「スネークは興味ないみたいなんだ。でも万が一気が変わるかもしれないし、念のためさ」
「……」

明るく話しながら外に出る博士の後ろ姿を追いかけ、サイボーグの肉体を持った青年も、玄関を出た。
外は眩しく、一瞬光の当たる部分が白飛びするが、すぐに画像に補正が入り、全てがよく見えるようになる。
初めはこの見える感覚に慣れず、よく頭痛を起こしたものだ。隅々まで鮮明という事が、人間の視界にはない。

確かにこんな肉体になってまで、生きる必要は無いのかもしれない。ボディを手に入れたとしても、脳の細胞にもいずれ限界がくるだろう。
人工の肉体は、あくまで入れ物に過ぎない。全ての情報の詰まった脳と、精神、魂というものの。自然の理に逆らってまで、留まらせておかねばならないとは限らない。
そうは思う。
しかし今、ここにいる自分達は、残される側の人間だ。
何とかして、この世に繋ぎ止めておきたいと願う気持ちは、やはり消せない。
同じように何とかしたいと思っているはずのスネークの相棒はしかし、半ば放り出したかのように、深刻さの欠片もない声で言った。

「こればっかりはね、あとは祈るのみだ」
「祈るって、…神にか?」
「そうだよ」

あまりにあっけらかんと告げられ、思わずまじまじと見つめてしまう。

このオタコンと呼ばれる男は、科学者にしては非科学的な話をよくする方だった。
非科学的と言われるものこそ、これから解明されていく現実だと、博士は思っているらしい。
分からない事にこそ、何かの可能性や思いもよらない発見がある。そういう事なのかもしれない。

彼の中に神はいるんだろうか。だとしても、その曖昧なものに、スネークの運命を任せるのだろうか。

「でも神は…何かしてくれる訳でもないだろう」
「ん?んー、君はスネークと同じ事言うんだな」

一番近くで何かしらできる人間がそれでいいのかと、やや声を低くする雷電の横で、オタコンは困ったように小さく笑って、セスナのフロートが水面をとらえる様を見ていた。
日差しに水しぶきがきらめき、水面を滑る機体が近付いてくる。
そしてその手前に、スネークの背中があった。
華奢になった背中だ。

長年ずっと頼もしく、オタコンも雷電も、彼のその、広い背中を見てきた。
どんな苦境に陥っても、仲間には後ろ姿しか見せないような男だった。
一緒にいれば、訳もなく安心でき、そしてどんな瞬間にも、たとえ膝を屈しても、最後まで諦める事をしない、それがソリッド・スネーク、伝説の英雄だった。

今ではもう、見詰める先にあるのは、去らんとする者の後ろ姿だ。
思えば彼だけが、特別遠くまで来てしまった。
そして行ってしまう。

「何かするのは僕達さ。例えば願ったり、祈ったりね。それが叶ったり、叶わなかったりする」
「……」

遠くにある背中に、まるで話しかけるような博士を見て、雷電は彼が、自分と同じ思いだと気付いた。
引き留めたい気持ちも、何かしたい気持ちも、する気もある。
近くにいる分、自分より余程、その思いは強いのかもしれない。
しかし彼は、それをやんわりと隠し、誰にも、スネークにも、悟られないようにしていた。

本当は、どんな事でもしてしまいたい。
しかしそれをしてしまったら、大切な何かを、踏みにじる事になるのかもしれない。
右を向いても、左に行っても後悔が待っている。
ならば、何を優先すべきなのか。










つづく






お話の2話目です。
昨日続けてアップできなかったのでお昼間ですが更新で。
木星コンビのやり取りなどに大幅?加筆がございます。
そこはその、わたくしの書くものなので、はい(笑)


 
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テーマ : 二次創作:小説    ジャンル : 小説・文学
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◆プロフィール

輝思回生

Author:輝思回生
MG、特にMGSシリーズをこよなく愛しています。
こそこそしたり、遠くから眠らせたり、後ろから忍び寄って脅してみたり、なんて私にぴったりなゲームなんだ!

とにかくオタコンびいきです。
オタコンならば何でもいいという!(笑)
そしてスネークおじいちゃんのお髭愛も!

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